Cinema Review

眠れる森の美女

Also Known as:Sleeping Beauty

王妃の誕生セレモニーに呼ばれなかった事に腹を立てた魔女が生まれたばかりの姫に呪いを掛ける。16年間森の奥でひっそりと妖精達に育てられ、美しく育った王妃は今夜城に戻る。

原題は勿論 Sleeping Beauty だが、お姫様の名前はオーロラ姫なんだそうだ。知らなかった。因みに王子様はフィリップと言うのだそうだ。まあ珍しくこの王子様はちゃんと画面に出てくるし、台詞もあれば歌もあるディズニーでは貴重な存在なのだが、今回はそんな事はどうでもいいのだ。

みなみ会館で久し振りに映画を見た。リバイバルで Sleeping Beauty を掛けると言うのだ。日本語吹替え版なのが実に残念だが、しかしワイドスクリーンで見られるこのチャンスを逃す手はない。実は『眠れる森の美女』はちゃんとしたビデオテープを持っている知り合いが居るので、そこで見ようと思えばいつでも見られるのだが、この判断は大正解だった。美しい。素晴らしく美しい。新しくプリントしたのか、絵が素晴らしく美しい。最初から最後までじーっと見入ってしまった。

眠れる森の美女』が作られたのは1958年で、当時波に乗っていたウォルト・ディズニーがどんなに時間が掛かってもいいから実現せよと命令して4年間掛けて作り上げたものだ。当時は24コマ毎秒のフルモーション全部を完全に手描きでやっていたから、およそ100分の作品に動画枚数20万枚と言うとその手間数から4年間は当然と思えてしまう。

何より今回僕が驚いたのは、その動きの良さだ。特に人間の動きの良さには感動した。オーロラ姫はずっと丈の長いスカートをはいているのだが、躍っている間やふとした体の入れ換えの時にスカートの中で足がどう動いているのか浮かんでくる。体の重心位置の移動とパーツの動きがすごくしっくり来る。人間の体の動きを良く知っているのだなあと思ってしまった。パンフレットを読むと実際に演技する人を連れてきて、観察しつつ描き込んだようだ。(これと同じ驚きを僕は『美女と野獣』の狼の動きでも感じた。)
色も綺麗だった。40年の時間を経ても(再プリントした時に調整するのかも知れないが)なお素晴らしく綺麗な色、コントラスト、解像度だ。当時としては全く珍しく、この作品は70mmで制作されている。全体を赤紫の色調が支配しており、主要なキャラクター以外は全部すごく漫画チックで平面的だ。これが作品を絵本調に見せているのだと思う。
妖精が魔法を掛ける場面があるが『ファンタジア』でも見た気がする透過光のイメージシーンが出てくる。これが何と三回続けて出てくるが、すごく綺麗で花火を見ているようだ。封切り当時の人達の驚きが想像出来る。

丁寧さ、動き、色。これ以上もう何も要らない。つまり40年前に良いアニメーションを作る為に必要なものは全て揃っていたのだ。他にはもう何も要らないのだ。

Report: Yutaka Yasuda (1996.01.01)


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