Be がんばれ

1996年に入って、突然新しい OS がパソコン市場に参入した。BeOSだ。
Keywords: [ BeOS ]

’90年代は OS にとって冬の時代かもしれない。

パソコン用OSは次第に淘汰され、AMIGA のAmi OSや、Atari STなどはさっさと消えた。OS/2はいつまで経っても離陸せず、NeXTは多くの人から正しい評価を受ける事が出来なかった。Appleですら行く先が危うい。
(アップルの経営危機的な噂は古典的アップル利用者なら、ほぼ毎年のように聞いたろう。だから今年の波もまあ大丈夫という見方も出来る。)

UNIX はその周辺の政治的変動より大きな変化を、その技術に継ぎ足す事なくこの 10 年間を過ごし、相変わらず移植だけが盛んだ。汎用機がなくなり、VMSがシェアを下げ、スパコンまでが UNIX を使っている。パソコンでも使われ、もう辺り一面 UNIX 一色になりかねない勢いだ。

新しい OS 、新しいアプローチをしなくなった数年の後、元アップルのプロダクトマネージャである、ジャン・ルイ・ガッセー氏が突如として BeOS を発表した。マルチプロセッサ対応 (SMP) の完全なマルチタスク、ダイナミック・ローディングのドライバ、Unicode、PowerPC互換機市場形成のために生まれた自由な規格 CHRP プラットフォームでの動作、UNIX shell 的なコマンドインタフェイスと GUI の共存、などなど。いわば今風の技術を後方互換性を断ち切る事によって全て実現しようという試みだ。その OS に、ガッセー氏は音楽や芸術分野など、ニッチな市場での人気の爆発を期待している。

僕はデータベースと一体化したファイルシステムを新造した事に拍手を贈りたい。Macintosh はその GUI 的アプローチのために、アイコンを創造し、そのためにファイルシステムを新たに作り出した。(Macintosh 用語で言うアイコンとは、単なる絵文字や、そのガラではない。一般のファイルシステムで言う「ファイル」の概念にほぼ同じ物だ。)

NeXTはファイルシステムを UNIX のそれで実現し、Macintosh 的ファイルシステムは採用しなかった。つまり単なるバイトストリームファイルと階層化ディレクトリになった。しかし Macintosh がアイコンで実現した簡便さは重視し、ディレクトリを複合ファイルとみなしてファイルと同様に扱えるようにユーザインタフェイスにカバーを掛けた。

いずれが良いかは問うつもりはないが、目的のためには最適なものを作る、この単純なアプローチが OS または環境というレベルではなかなか行われないのが現実なのだ。

BeOSのデータベースとファイルシステムの融合という考え方は素晴らしい。ファイルのロック、アクセス保護、リカバリ、分散配置、これらがすべてデータベース的アプローチで行なえる可能性があるからだ。属性をうまく使ったファイル検索が出来る事も良い。ファイルシステムは長い間、ファイル名の断片による検索しか機能的に提供できなかったのが、僕には不満でならなかった。Macintoshではクリエータなどの属性による検索は可能だが超低速だ。データベースなら検索の高速化技法は得意中の得意だ。

BeOS はデビュー当時から標榜するように、メインストリームを目指す OS ではない。しかし OS の冬の時代に、新しいアプローチを投げかけている事は素晴らしい。だから応援する。頑張れ BeOS。



Yutaka Yasuda

1997.12.08