Cinema Review

Stoker

Also Known as:イノセント・ガーデン

監督:パク・チャヌク
出演:ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン、マシュー・グッド

18歳の誕生日、いつものように誕生日のプレゼントが届いたが、中身は靴ではなくカギだった。その日、父が死に、葬儀の場に叔父が現れた。

主演は『アリス・イン・ワンダーランド』のお嬢さん、だが、だいぶ雰囲気が違う。本作では黒髪だからか、とも思うが、もともとお人形さんぽくない顔立ち、雰囲気なので僕にとってはこちらの方が彼女にはマッチしていると思う。

全体に構成美というか様式美を感じる。
特にエンディングがステキだ。最後の場面は実はオープニングに提示されたのだけれど、最後の場面の真相が明らかにされると、その意味(解釈)がまったく逆転してしまう。
オープニングでは赤と白の花だと思えたものが、実は白い花に血のりの赤だった。
彼女の笑った顔が,最初はミステリアスに見えたが実は獲物を追い詰めて勝ち誇った笑みだった。

オープニングのすぐ後、葬儀のシーンで母親のハイヒールと、娘のサドルシューズが並ぶ。
そのシーンでは靴擦れ(まめ)をつぶすようすを通じて、その靴が小さくなり、誕生日にはまた新しい(ワンサイズ大きな)靴が届くはずだ、ということが示される。
ところが実際に届いた靴はワンサイズ大きなサドルシューズではなく、クロコダイルのハイヒールだった。18 歳になり、大人になった娘を女として迎える、これもまた一つの様式だ。

90分強。長くは無い。前半、ゆるやかに進行するかに見せておきながら、冷蔵庫で家政婦が見つかり、叔母が殺され、ピアノを連弾するエロティックな場面まで数分の急展開となる。その後、常にスリリングなシーンと性的なシーンが重なるように進む。シリアルキラーは性的快感のために犯行を繰り返す、といった話があるが、この構成はまさにそのような感覚を見ているものに強要するようだ。

全体として映像がとても好きだ。特に靴に囲まれたシーケンスは大好きだ。こういう「映画的表現」がなければ映画じゃないと思ってしまう。

なんと脚本がウェントワース・ミラー、と言われても分からないが、『プリズン・ブレイク』の主演俳優。これを別の名前で書き、その内容で勝負したと言うから凄い。

適当にネットのレビューを見て回ると、タイトル(原題)がストーカーだがこれでは誤解されるから邦題をこのようにしたのだな、とコメントしている記事が多くて驚く。(stalker - つきまとい、と stoker (今回は姓)は同じ音)
娘を追いかける叔父は文字通りストーカー(stalker)だ。彼女が生まれてからずっと、18年もの間、病院の中から(家政婦を通して)娘を見張り続けて、手紙を書き、靴を贈り続けてきた。そして 18 歳になったその日に退院し、彼女を迎えに来たのだ。
最後に叔父役であるオッサンが吸血鬼というか高橋葉介が描く吸血鬼(『夢幻紳士』など)にとてもイメージが似ている。ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』の影響があるというし、人が聞こえない音まで拾える、といったあたりからも、これはどうやら吸血鬼映画のようだ。(こちらのストーカーは stoker、題名に同じ)
モールス』も僕は途中まで吸血鬼映画としては見なかった。この作品に至っては最後まで吸血鬼映画とは認識しなかった。しかしそうだと思って見直すと、そこにやはりまた多くの意図が含まれた絵を見る事が出来る。
そう言うところも含めて、とても好きな映画だ。

Report: Yutaka Yasuda (2014.01.23)


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