オフィスを持たず、特製のリムジンで世界の情報を集め、金に換えることに成功した青年の一日、ただし破滅の24時間を描く。
『イースタン・プロミシーズ』以来、とても久しぶりに見たクローネンバーグ作品。彼の作品は「見なければならない」。だから見た。そして彼の法則に違わぬ壊れた作品だった。僕の中では「名作の次にはとてもひどい作品が待っている」「しかしその次にはまた素晴らしい作品が立ち現れる」という経験則がある。そして前々作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』が素晴らしい出来で、ドキドキしながら見た前作『イースタン・プロミシーズ』がそれなりに良い作品だったので、もうこれはきっと、、と思って見た。
この、彼の作品の(個人の主観的な判断とはいえ)浮き沈みを僕はずっと見てきたが、今作の沈み具合いは『スパイダー』のときを思い出させる。僕はその時のレビューに「辛い、奇妙な温度感の、クローネンバーグとの再会だった」と書いた。今回もまた、寝そうになりながら、彼のメッセージを何とかすくい取ろうと必死に画面に食いついていた。
音楽ハワード・ショウ、衣装デニース・クローネンバーグは例によっていつもの通り。撮影もずーっと同じ、ピーター・サシツキー。
だから作品としては落ち着いて見ていられる。それは間違い無いのだけれど、ただ、内容が錯乱している。僕は作家のメッセージに自分の焦点を合わせることが出来ない。はらはらと翻弄される二時間だった。
主演のロバート・パティンソンは『トワイライト』シリーズ、あるいは『ハリー・ポッター』シリーズで有名になった若手男優。サラ・ガドンは、、と思って調べてみたら、なんと僕はクローネンバーグの作品『危険なメソッド』を見逃していることが判明。ヴィゴ・モーテンセンとキーラ・ナイトレイが出ているという。はてさて、僕の私的経験則はどちらに適合するのか?つまり前作『危険なメソッド』はとてもひどい作品で、『コズモポリス』は少しマシになった状態なのか、それとも前作は良品で、ここでがくっと落ちたのか。
いずれにしても僕は彼の作品は「見なければならない」。だから見るしかない。劇場で見逃したのは残念だが仕方が無い。さて、いつ、どうやって見るか。それが問題だ。