Cinema Review

インベージョン

Also Known as:The Invasion

監督:オリバー・ヒルシュビーゲル
出演:ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ

宇宙からやってきたウィルスが人々を侵略していく。

ゾンビ』『28日後』『バイオハザード』などなど、この手のものは数多くあるかと思う。使い古されている、といってもいいかもしれない。そこに宇宙からのウィルスだったり、感染爆発(パンデミック)などという最近良く聞くちょっと怖いものなどを振りかけたりして、そのあたりのアレンジで結構見られる映画になっている。そしてどんなにゾンビが町にあふれても、最後はちゃんと脱出できてハッピーエンドというお話で、安心して見る、そんな作品。

が、それでも二点、思ったことがあるので書いておこうかなと。

まずニコールが美人だと言うことについて。
今さら何を、と言う人も多いだろうが、僕は一般的な評判とは違って彼女にはあまりピンとこなかった。どちらかというと cool beauty というか、冷たい感じのする見た目だというのがその理由かもしれない。が、この作品の中での彼女はよろしい。少し柔らかい感じで、優しい印象の表情が多かったからかもしれない。
その反対に、冷たい感じの絵も多い。感情を表に出すと非感染者(つまりターゲット)とバレてしまう、という設定から、彼女は時々凍り付いた表情で歩くのだ。これをねらったキャスティングなのかもしれない。
彼女は以前見た『Dogville』で同じくサイコ的なシチュエーションの話に出ていたが、なるほどこうして見ると、こんな凍り付いた表情の場合、こういった美人でないと絵にならないだろうと思う。

もうひとつは、構成というか編集が良かったことについて。
ハリウッド映画といえば順番通り、期待通り、ちゃんと説明十分に進むものと相場が決まっているが(逆に矛盾を吹っ飛ばして分かりやすく進む場合もあるが、まあ分かりやすくしているのだろう)、この作品は省ける説明はなるべく簡略に済ませる面白い方法をとっている。例えば囲みを突破して子供を助けに行くかどうかを二人が話し合う場面。車で検問を突破するシーン(つまりその先に起きたこと)を対話の間に挟み込んで進めている。観客はああ、この先こうなるのね、と思いながらそれに至る断片的な対話を聞くことになるが、もちろん対話は端折っても問題ないし、そこは別に見せ場でもなんでもないからそれで十分なのだ。そして対話シーンのみならず突破のアクションシーンをも省略できる、というダブル効果である。
その代わりに、前半部分のサイコスリラー的なシーンにより多くの時間を取れる。実際、感染者が出てきてドタバタし始めるのは真ん中あたりからだ。上映時間は1時間45分程度だから、別にここまで詰めなくても良いのかもしれないが、
それまでの落ち着いた感じと、それ以降のこうした切迫した感じに切り詰めたシーンのコントラストがそれなりに出ていて良い。逆にこれを 2 時間にしてはいけなかったのだ、という印象だ。そういう作品は概して良い作品なのだ。

そんなこんなで、なかなかいいじゃない、と思った次第。何でも説明すればいい訳じゃない。

とはいっても、悲観した二人(親子?)がどこかのゲートの上から身を投げるシーンは、さすがに地面に衝突するところまでは見せずに切っている。このあたりは『スウィニートッド』のティム・バートン、『回路』の黒沢清とは違うところで、まあ妥当なバランスというところか。

Report: Yutaka Yasuda (2008.02.20)


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