Cinema Review

ミラーマスク

Also Known as:Mirrormask

監督:デイブ・マッキーン
出演:ステファニー・レオニダス、ジェイソン・バリー、ロブ・ブライドン

サーカス一座の娘の心の世界を描いた小品。ほぼ全編にCGを多用して幻想的な世界を描くファンタジー。

いろいろとあって映画を見る機会が減ってしまった。多くの映画をこの二年間ばかり見逃したように思う。久しぶりに見たこの映画は、いや、結構良かった。良いんじゃないだろうか。フィルム上映ではなく DVD 上映だったのが残念だった。ただひょっとしたらそもそもフィルムでは焼いてないかも知れない。この作品は非常な小資本による CG を多用した映画なのだ。

面白い構造の作品だ。サーカス一座の娘、という、それほど一般的でない(ある意味では非日常的な)実生活を過ごす多感な時期の少女が、母親の病気と入院をきっかけに自分の中の不安定な空想世界と対話する、という筋書き。『不思議の国のアリス』『オズの魔法使い』などに較べて、空想世界と現実世界の距離感がある程度近いところに設定されている印象だ。ファンタジックな絵を描き、壁一面に貼っている精神的に不安定な年代の少女。その絵は実は監督自身と、美術デザイナーの手による。まさに現実世界と空想世界との中間にあるものだ。またその少女のキャスティングが気になる。意図的だったとすればかなり面白い。つまり彼女はある程度中性的な雰囲気なのだ。まったくユニセックスに描かれているわけではなく、明らかに少女として撮られているが、しかしオズジュディ・ガーランドほどでなくてももっと、例えば『ラビリンス』のジェニファー・コネリーやハーマイオニー役のエマ・トンプソンのような雰囲気にも出来ただろうに。

監督はどうやら、あちらでもない、こちらでもない、その中間的な不安定さを周囲に散りばめたようだ。

個人的にはこういった様々なイメージが並ぶ風景は好みで、少し暗めの金属質な配色もある程度見慣れると良い印象になった。
ヨーロッパの作品はなんとなくこういう印象。とりあえず米国の味わいではない。

本作の作家達はイギリスの映画やテレビのコミュニティにもつながりがあるようで、上映前後に舞台に出ていろいろ話してくれた制作時のエピソードの中にテリー・ギリアムの名前が挙がっていた。彼らがプロットを練るために紙片にさまざま書き付けて並べていた頃、ギリアムが訪ねてきてそれを見ながら話をしたという。
作中に出てくるドローイングは監督自身のもの、と本人が言っていた。こういうイメージが沸き上がってくる、というのは本当にうらやましい。

追記:
ふと見るとレンタルビデオにも並んでいる。ほほう。

Report: Yutaka Yasuda (2006.12.30)


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