Cinema Review

砂と霧の家

Also Known as:House of Sand and Fog

監督:ヴァディム・パールマン
出演:ジェニファー・コネリーベン・キングスレー、ロン・エルダード

政府の手続きミスで一つの家が競売に出されてしまった。家を失うもの。それを得たもの。誰にも、何の悪意もなくても、タイトな社会システムは関わる人たちを締め付けていく。

ううーむ。なにげに評判が良かったような記憶があったので DVD を借りてしまった。が、辛い映画だった。。キャラクターがひどくしっかりしていて、リアリティがありすぎる。僕らが強く依存して暮らしている社会システムが、実は僕らにとっては負荷が高すぎる状態でドライブされており、一度事故が起きると自分ではそれをコントロールできないことがひしひしと感じられる。社会システムは僕らを守ってくれているのか、またはその隙間にギリギリ隠れて暮らしているのか、どっちなんだ。

本当はもっと軽い社会システムで暮らしたい。もっと自由度の高い、選択肢の多い世界で暮らしたい。ぎりぎりまで利益や幸福感を最適化して追求してはいけないんだ。突きつめればそれは分不相応なのだ。

そういうことをずるずると感じてしまう。僕らの願う快適さと、僕らが抱える弱さの、このかみ合わせの悪さはなんだろう。

(砂と霧の家とはよく言ったもの。僕らは砂の上に組み立てられた世界で、柔らかくて恐ろしい霧に包まれて暮らしているというのか。)

ただ、まるでホラー映画のように止められない。この先何が起きるんだろうと思いながら、墜落していくその様子を見ることを途中で放棄出来ない。これは作りが良いということよりもむしろ、そのように意図して作ってあるからではないかと思ってしまう。最後は何か良いことが起きるのではないかと僅かな希望を無闇に握りしめながら見てしまうところがまたひどい。

そういう意味では記憶に残る作意的映画ということになるかもしれない。おお、よく考えたらホラーってみんなそういうふうに出来てるのか。黒沢清とか。

少し納得。

Report: Yutaka Yasuda (2006.05.23)


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