アイリッシュ労働者階級の兄弟が、ロシア人マフィアとのトラブルに巻き込まれる。命を賭けたやりとりの後、彼らは神の啓示を受け、処刑人となる。
見逃がした『シークレット・ウィンドウ』を借りるつもりでレンタル屋に行ったのだが新作(当日返し)だったので断念。その代わりにお気楽 B 級作品のつもりで『バイオハザード2』と一緒に借りてきた次第。
ところが本作、決してお気楽 B 級映画ではない。低予算(といってもそこそこ金はかかっている)ではあるが、非常に好みのセンスだ。ストーリー運び、演出も、カット割りも、アクションも、その隅々にまで作り手側の気持ちが入っている。なんだろう、『バウンド』でウォシャウスキー兄弟が見せたような、低予算だけれどその入れ込み具合いは誰にも負けない、というメッセージが強く伝わってくる絵面だ。こうでなければいけない。(本作は原案・脚本・監督をトロイ・ダフィーが一人で担当している。ああ、そうでしょうね、という感じだ。)
そうした背景の良さに加えて、監督は実に魅力的なキャラクターを作り出すことに成功している。冒頭、二人の兄弟のシンクロニシティと信仰心が執拗に描かれる。二つ並ぶベッド。シャワー。似たような服装、体格。兄弟で子犬のように遊ぶところや、クリスチャンとしての敬虔さと同時に描かれる彼らの粗暴さ、残虐さ。それらを矛盾なく同居させることに成功している。作品中、変に女っ気がないのも良い。このあたりはハリウッドの商業主義をうまく押さえることに成功したのだと思う。
DVD にはこの二人によるスクリーン・テストの映像が少し入っている。まさに 8mm で撮ったような自主製作的な雰囲気が充満した映像だが、主演の二人は本編とは異なる髪型、立ち姿で映っている。面白いことにこのテストでの雰囲気が本編と余りにも違うのだ。髪型、髪の色が違うだけではない。なんというか、本編撮影時には強烈な気合いが入っていたのではないかと思う。あの野犬のような、キレそうな眼がそこにはなかった。本編では兄役(ショーン・パトリック・フラナリー)の冷静でタフなイメージ、弟役(ノーマン・リーダス)のナイーブだが狂気を秘めた視線が印象に残る。逆にある意味「眼が記憶された」映画になったとおもう。
大事なことだ。こういうインパクトのあるキャラクターを作りだせれば、映画はそれだけで半分以上できたことになる。『ニキータ』『ベティ・ブルー』『GO』などなど。。
勿論そう言う時の脇役は重要なファクタだ。ウィレム・デフォーは相当に変な刑事役で、その容貌といい、格好といい、主役を食ってしまいそうな勢いだ。主演の二人はよくこれと互してやったものだ。食われることなく、逆に良くマッチしていた。むしろ後半に登場する「危険すぎる殺し屋」のはずのジイさん(ビリー・コノリー)が迫力負けしてる。この三人に較べると「眼で殺せない」タイプだからだろう。それこそチャールズ・ブロンソンかジョン・ヴォイトあたりの出番だったろう。(そういう意味では『ペイバック』は後から後から登場するボス連中が実にいい味ね!)
エンドロールを使ったオチが実に良い感じだ。