Cinema Review

助太刀屋助六

監督:岡本 喜八
出演:真田 広之鈴木 京香、村田 雄浩、仲代 達矢天本 英世岸部 一徳岸田 今日子小林 桂樹鶴見 辰吾、風間 トオル、本田 博太郎

自称助太刀屋助六。東に仇討ちあると聞くや勝手に行って助太刀し、西にまたもう一つと聞けばとって返す奇妙な流れ者。小金を稼いで久しぶりに故郷の村に帰ってみると、何だか一波乱ありそうだ。助六、心が躍る。

岡本喜八+真田広之と言えば『EAST MEETS WEST』で同じである。その 7 年後、ふたたび組んだのが本小品だ。88分、スピード感あふれる喜劇である。喜劇でありながら古典的時代劇の韻をきっちりと踏んだ、実によくできた作品だと思う。時代劇ファンな先輩が、黒澤明の作品を「あれは時代劇じゃないから(西部劇だから)」とさらりと流し、代わりに大川橋蔵の股旅ものを貸して下さいましたっけ。それと同じ血を感じつつ、監督オリジナルのコメディのセンスを堪能できる。おやじさんがタガを打ちこむ音に合わせて錆びた刀を研ぐ姿は、北野武が『座頭市』でやっていたのとまったく同じだ。なにしろBGMがジャズなのだ。

下手をするとこうしたコメディはペラペラの三文お笑いになってしまいそうだが、しかしそれをただものではない時代劇の磁石が引き留めている。強烈だ。仲代達矢にいたってはその立ち姿、一挙手一投足が格好良すぎるほどに決まっている。時代劇出身と言っても良いほどキャリアの長い真田広之の着こなしも同じく隙がない。宿場町のセット、建物、小道具に至るまで、強烈な時代劇の吸引力に良くも揃えたなと思える怪優らの迫力を材料にしてはじめて、ジャズの BGM もコミカルな演出も、皆空中分解せず見るものにぐっと力を込めて届けられる。力だ。コメディには力が必要なのだ。

いいなあ。喜八さん。仲代達矢をもってくるのは反則だ。格好良すぎる。真田広之も改めて良いと思う。日本人で良かった。時代劇の血が入っていて良かったと感じた素晴らしい一本。こういうのがもっとあって良い。

(つい先日、岡本喜八監督は亡くなられた。この作品はその追悼特集放送で見た。)

Report: Yutaka Yasuda (2005.03.21)


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