男は知らない部屋のなかで目覚めた。脚をくさりでくくりつけられ、その部屋には他に二人いた。一人は見知らぬ男。もう一人は死体。密室の中で、生きている二人は徐々に追いつめられていく。
この映画を作った二人、監督のジェームズ・ワンと脚本のリー・ワネルのプライドとパッションがにじみ出るような、彼らの叫びが聞こえるような切れの良い作品だった。作品の枠組みからこぼれそうなイマジネーションを生のままぶつけ続けられるような 100 分を耐え、最後に何だか安っぽくなったかなと思ったところでしかし声も出ない大技で彼らは落としてくれた。こういう映画を僕は待ち続けている。映画ってこういうもんでしょう?
同じような小作品での切れの良さを僕は『CUBE』で感じた記憶がある。低予算でもこうした作品は作れる。ウケを狙ったり、安っぽいオチにすることなく、自分たちの才能とそれに対する誇りに賭けて、クリエイターたちは何かを作り出す。カネがない以上、自分たちから出せるものはそれしかないじゃないか。金や、権力(自分に対する支配力)をもっている連中に対抗できる材料は、僕らの両手にあるはずの自由とプライドだけだ。失うことを恐れず、孤立することを恐れなければ、僕らは何かを残せる可能性がある。それが約束されないからといって、何だ。
ところで脚本のリー・ワネルは、二人いる主演の若い方、その人である。(『マトリックス・リローデッド』のアクセル役もやっていたりする。)
「奴は特等席で観賞するのを好む」と劇中で出てくるが、いや彼こそ特等席に陣取ってこの映画を作り上げたのだ。いつも前情報無しに見る僕は、この事実を観賞後に買ったパンフレットで知った。まさに二重の落ちである。秀逸。