実在した女性連続殺人犯(シリアル・キラーと言えば大多数が男性だ)の逃避行を冷たく描く。
いまハリウッド女優さんで一番グーだと思っているシャーリー君が、恐ろしいほど太り、特殊メイクまでして若くない売春婦役に挑んだ話題作だ。なんとも冷たく、ただひたすらに実在した人間の経過を追い、淡々と描く。観るものの感情移入を拒絶するようなつくりで辛い。彼女が護ろうとした若い女性同性愛者をクリスティーナ・リッチにキャストしたのは非常に成功していて、見終わった今、さて他に誰をキャストできるかなあと思ってしまうほどだ。
途中で 80 年代のポップスソングが何度も流れる。この作品は 80 年代終わりから 90 年代に掛けてのものなのだろうか。相変わらず資料を見ない僕にはよく分からないが、80年代に高校生だった僕はよくこうした曲を聴いていた。懐かしいスティーブ・ペリーの曲が流れてきて、ああ彼はAsiaの、、と思ったら違う、Journeyだ。もう 20 年になる。曖昧な記憶に埋もれつつある、しかしその空気が脳から消えることのない 80 年代だ。
あのころを思い出させながら、映画はしかし冷たく進む。全く温度感の感じられない、実に冷え冷えとした映画だ。まるで変装としか言えない姿になったシャーリーが、この役を何故選んだのか、なぜこんな映画になったのか、僕にはよく分からなかった。