Cinema Review

チルソクの夏

監督:佐々部 清
出演:水谷 妃里上野 樹里、桂 亜沙美、三村 恭代、山本 譲二、高樹 澪、淳評、夏木 マリ

下関と釜山の高校で毎年 7 月 7 日に行われている陸上競技大会で、ともに走り高跳びに出ている男女が出会い、一年後の七夕の夜に再会しようと約束する。次の大会まで、長い一年。互いの時計が動き始める。

初恋の来た道』で僕は何もかも削り落とした映画の良さを感じた。佐々部さんはそうしたものを作りたかったのかも知れないけれど、僕はこの映画にはいまひとつ良さを感じられなかった。四人の女優さんたちは良かったと思うし、山本譲二も良かった。演出もいくらかいいところがあったのだが、どうしても「落ち」というか、感情の落としどころがみつからなかった。この収束感の薄さはなんだろう。

佐々部さん、『半落ち』の監督さんだったようで。
実はこの『半落ち』、僕は見逃していたのだが(いつものように)前評判が良かったことで、気になっていた。先日 DVD を借りて見た次第だが、このレビューには何も書かなかった。書けなかったと言って良い。僕はこのレビューには何か自分の中でひっかかったことを書こうとしているのだが、『半落ち』は実にその引っかかりどころが薄かった。その薄さが二つの作品に共通している。うーん。
劇中、『幸せの黄色いハンカチ』が出てくる。あの山田洋次監督のような落ちどころがあれば良かったと思う。(それほどわざとらしい落ちでなくても勿論良いのだろうけど。『たそがれ清兵衛』でも僕は山田さんの落ちどころにはまってしまったので、どうやら僕は山田さんの演出にひっかかりやすい年頃にいるような気がする。)

映画のなかで女子高生役の四人はとにかくよく走った。それぞれのプロフィールなどをざっと見てみると、とりあえず三人までは何らか陸上競技をやっていた経験があることが確認できた。さすがにそうでないとあれだけ走るのは無理か。主演の水谷くんはハイジャンプの経験があったようで、これもまたさすがにそうでもないと映画のために背面跳びなんてできないよねえ。上野くんも『リング』の深田恭子と並ぶくらいすごい顔をして走ってた。
そうそう、水谷くんは背が高いという印象があったので普通に皆と並ぶと浮くかと思ったのだが、それなりに揃っていた。プロフィールを見ると上野くんも結構高かったので、少々驚き。上野くんは『ジョゼと虎と魚たち』で結構気に入ったので、次作の『スウィングガールズ』も見るつもり。ただ本作はまったく水谷くん主演の作品で、それがまた非常に良かった。水谷くん、他にも出ないだろうか。

ところで昔から良く言われている、「高倉健効果」ってあるでしょう?と言ったらわかって貰えるだろうか。健さんの映画を見た観客は皆、劇場から出てくるとき肩で風を切って歩いていくというあれだ。この映画を見た帰り、駅の改札を入ったところで、ホームに電車が入ってくる音がした。僕はちょっと長めの階段を二段とばしで駆けあがり、発車間際で間に合った。普段そんなに頑張らないし、別にそんなに慌てて乗らなくても良かったのだけれど、これはやっぱり「チルソク効果」なのだろうか。彼女たち四人、ほんとによく走っていた。

Report: Yutaka Yasuda (2004.08.24)


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