Cinema Review

キャシャーン

監督:紀里谷 和明
出演:伊勢谷 友介麻生 久美子、寺尾 聰、樋口 可南子、唐沢 寿明、宮迫 博之、佐田 真由美、要 潤、西島 秀俊、及川 光博、寺島 進大滝 秀治三橋 達也

たった一つの命を捨てて、生まれ変わった不死身の体。鉄の悪魔を叩いて砕く、キャシャーンがやらねば誰がやる。往年の SF アニメの実写リメイク。

オープニング、青い空と雲を映しながら、聞き慣れたあの声が作品世界の説明をする。30 代後半タツノコ世代はこれだけでぐぐっと引き込まれる。紀里谷監督に拍手だ。

枠組みとしてはスチームパンクというのだろうか?別に類型に頼った記述をしているわけではないと思うので分類することに意味はないとおもうが、まあとにかく蒸気やら歯車やらが背景に満載だ。全編実写背景はなく、すべてはマット画かセット、そうでなければ CG だ。下手をすると普通に撮影された背景などひとつもないかもしれない。役者は全編ブルーマット前で演技していたとしても違和感はない。それくらい手を入れられた映像だった。これを紀里谷監督は PC ベースの安いシステムで全編処理したというから、今後の新たな流れの一つになるかもしれないと思ってしまう。

このプロダクションデザインは林田裕至とある。スチームパンクっぽいところが何というかいまひとつインパクトが無く、あまりびびっと来ないのは何故だろう。何か類型的なのか、日本の旧字やロシア文字がやたらに出てくるところで現実感をもってしまうのか、いまひとつ別世界的距離感の薄い背景となっている。作品全体の僕の見た印象はそして「いまいち・・」なのだ。

僕はストーリーを殆ど追わずに見ているし幾らか良いところもあるのだが、どうも乗り切れなかった。なんなのだろう。本当に良いところも幾つかあった。

例えば僕は主演の伊勢谷君の声が気に入ってしまった。良い声だとおもう。対して麻生君のルナ役は結構見た目は当たっていると思うのだが、声がよくない。少し丸すぎる。凛とした響きを期待してしまうのはアニメーションのルナ役が戦う役だったからか?(本作では彼女は普通のお嬢さんで戦う役ではない。)
役者で言えばなんといっても佐田さんがその存在感で僕を引きつけた。これは結構いいかもしれない。悪くはないはずなのだがどうしても合わなかったのはブライキング・ボスの唐沢君。おそらくアニメーションのイメージが余りに強すぎて駄目だったのだろう。
麻生君、伊勢谷君などの衣装がかなり良かった。衣装担当は北村道子さんだそうだが、こちらも僕は知らない。今後要チェックか?
そして秀逸だったのはその戦闘シーンだ。ツメロボットの頭を引き抜き、空手チョップよろしく真っ二つにする予告編映像などを見て僕はわくわくしていた。そしてその期待に違わぬ、大好きなアクションシーンに仕上がっていた。このアクションシーンの絵コンテ担当として樋口真嗣の名前があがっている。『ガメラ』などで聞いた名前だ。素晴らしい。

こうした要素を多く含みながら、それでもピーンとは引っかからなかった。141 分、長すぎたのではないかと思う。脚本もいまひとつだったのかもしれないが、それにしてもこれを 100 分くらいに切って説明的な箇所をばっさり切れば、かなり良い結果になったかもしれないと勝手に思う。

Report: Yutaka Yasuda (2004.05.01)


[ Search ]