老婆と暮らす足の不自由な少女。偶然に出会う男。そのゆらゆらと漂う二人の恋愛を描く。
つい何時間か前に見た。
少女といいつつ池脇君演じるジョゼは実は年齢不詳である、とか、気になることはあるが、ま、とにかく。ラストの CG のカッコ良さなど、細かいこともいろいろあるが、それもとにかく。
良い映画だと思う。久しぶりに良い邦画を見たという印象。それは邦画をたくさん見たが良いものがなかったという意味ではなく、こうしたメンタリティの部分で感じられるものがあるのはやはり同じ日本の映画だ、という意味で。ある意味では語られない部分、省略された部分が余りにも多くある作品なんだと思う。
パンフレットを読むといろいろ「共感」といった言葉が並ぶ。僕はたぶんこのパンフレットに書いている人たちのような共感、というものは感じていないだろうなあ。僕の若い頃はこんな感じではなかったからだ。
そう、これはやっぱり人間のある一時期、僅か10年ほどの間に強く感じられる時間を切り出して作った映画なんだ。僕にはもう遠すぎる。時間的にも、精神的にも遠い。
僕はこんなに自分の感情に素直に反応することはできなかった。勇気がなかった。出会う人たちひとりひとりにこれほど素直に向き合うことはできなかった。自分の感情と向き合う勇気がなかった。コントロールできない未来とつき合う勇気がなかった。
ぜんぜん純粋でもない、イノセントでもない登場人物と、深い絶望感に満ちた背景と、美しい映像と、緻密なつくり、役者のこと、書きたいことは幾つもあるけれど、いまはとにかくこれだけ。