禁酒法時代のアメリカ、地方都市で組織の殺し屋として働いていた男と、何も知らない幼い息子。ある日、息子は父親の仕事を見てしまい、世界は一変した。母と弟を殺され、父と長男のつらい逃避行がはじまる。
ジュード・ロウが出ていた。だから見た。映画の作りは悪くなく、うまくまとまっていると思うが、しかしパッとしない。そもそもトム・ハンクスという俳優は好みじゃないのだ。いくら名優、ポール・ニューマンが出ていても、きっちり三つ揃えを着た俳優たちが脇を固めても、どうにもパッとしない。
結局、変質的な追跡者を実に気色悪く演じたジュード・ロウが逆に光ったくらいだ。彼の出ている場面はどれもテンションが高く、作品に緊張感をもたらしている。こういうのを普通「主演を食う」というのではないか?
ジュード・ロウは『GATTACA』『クロコダイルの涙』『リプリー』『eXistenZ』『A.I.』『スターリングラード』『ロンドン・ドッグス』とそれこそ片端から見てきたが、そのたびに印象が違う。ある種のカメレオン俳優か。ロバート・デ・ニーロはカメレオンと呼ばれるかも知れないがあれは変装の領域だろう。ロビン・ウィリアムスのように化けても化けても彼だとわかってしまう。
今のジュード・ロウにはそういう意味での彼らほどのアクがなく、強烈に発するニオイがない。だから背景に溶け込むように化けられている。ただその眼だけが、いつも変わらずに光っている。彼の容貌とともに、これは良い結果を出していると思う。
しかし、しかしジュードのこの作品での名演技は、ラストシーンにとどめをさす。撃たれ、パッタリと倒れるその姿の、まあペラペラなこと。これが出来る役者はいま、確かに君しかいない!