近未来、人類は宇宙からやってきたゴーストたちと絶望的な闘いのなかで細々と生きていた。バリアに護られた僅かの都市の残骸の中で息をひそめて暮らす人類の希望は、八つの要素を集めることだった。
あらすじを見ていているとまるで『フィフス・エレメント』のようだ。宇宙からやってきた何者かが全ての生命体から生命を奪っていくという設定や、幾つかの要素を集めて敵の本体に送り込めば万事 OK というような筋書きは実にありそう、というか子供じみていて、他のストーリーの展開も含めてがくっとテンションが下がるところだ。とにかく見ていた時のテンションの低さは並みではなかった。
キャラクターの声にはそれなりの俳優を揃えているはずなのに、それが演出であるかのように棒読みだ(そうじゃないのかも知れないが棒読みに聞こえるんだからしょうがない)。セリフもまたロールプレイングゲームの画面右側にスクロールアップしてきそうな単純なものばかりで、実にリアリティを感じない。『TOY STORY』『バグス・ライフ』なども割合にシンプルなセリフが多いが、アニメーション独特の非現実的なまでのテンションの高さ、わざとらしさを加えたせいだろう、むしろこちらにリアリティがある。
ただCGの技術は高いと思う。最近は SIGGRAPH などの作品を見ていないのでしっかりした評価ができないが、それにしても全体として違和感なくまとまっていたのは凄い。人間の表情と動きがまだまだだが、それ以外の多くの点で美しいと思える。『メトロポリス』も部分的にかなり美しいと思ったけれど、この作品は本当に美しい。アニメーションを見ている人なら、キャラクターと背景や物の描写が揃っていないと駄目だと言う事がよく分かると思う。『エースを狙え』のキャラクターが『ドラえもん』の背景に出てもしようがないのだ。だからPIXARは『TOY STORY』などで人間をあのように描いたんだと思う。(この意味で『メトロポリス』はすごい冒険をしたなと思う。)
この作品はそうした意味で、うまく着地点をつかんでいたと思う。
主人公の夢の中のシーンで、水面に立っている(!)ところを水面下から写すような、実写では不可能な描写などが幾つかあり、こうしたシーンを全体の映像と違和感なく用意できるところは全くアニメーションの良いところだと思う。そういうイマジネーションは幾らか以上あったはずなのに、何故こんなにアッサリしたおはなしになったのか、本当にわからないところだ。筋書きや背景(舞台設定)だけをパンフレットで読む限りでは、それほど悪いとは思えない。設定は悪くないがストーリーテリングにおいて駄目だったということか。
スクウェアはこれで大損をしたわけだが、まあ夢があって良いとは思う。未来はバットを振らない奴より振る奴にある。がんばれスクウェア!