意識不明になったシリアル・キラーの深層意識に飛び込み、事件の解決を試みる精神科医。好きな人は好きだが、嫌いな人は見た事を後悔するかもしれない種類の作品。
脳味噌に探針を入れて動かしているように、僕のアタマに作家のイメージが侵入してくる。個人的に最も好きなタイプの作品だ。
この作品のストーリーはシリアル・キラーに誘拐された女性を救出する、という、つまりよくあるタイプの「サスペンスもの」だ。だが、僕にとってはそんなことはどうでも良かった。ただその映像に身を浸して過ごした。作り手側も、その映像効果とストーリーのバランスをかなり前者に偏らせて作っているようで、実際のところサスペンス映画としての色合いは薄い。映像の背景にもならないくらいだ。
ちなみに精神的破綻をきたしたシリアル・キラーの苦悩、というようなものも、それほど描き込まれるわけではない。『羊たちの沈黙』がそうだったように。こちらもせいぜい背景どまりだ。
良い傾向だ。あなたはただそのイメージ、その衝撃だけを受け止めれば良いのだ。
冒頭、砂漠のなかを歩くジェニファー・ロペスが映る。まるで女王のような白一色の衣装で砂丘を尾根づたいに延々と歩く。黄色い砂漠の地面とのコントラストがはえる。『プリシラ』『裸のランチ』を思い起こさせる。
死体を漂白するシーンも、『DUNE』のような筋肉イメージのスーツも、それぞれインパクトのある絵だ。(実際このスーツのことだけを考えて彼女をキャスティングしたのか?とさえ想像してしまう。グラマラスな体によく合っていた。)
圧巻はサイコ男の心象世界に入り込んだ最初のシーンだろう。まったく恐るべきイメージだ。その光景を眼に焼き付けるのが怖い。そこからイメージを膨らませるのが実に怖い。けれど我が眼に言い聞かせて、僕はスクリーンを直視した。露骨とも言える CG 合成シーンもまた、『X-MEN』『SPAWN』同様に美しい。
この作品世界を作り上げたのが一体誰なのか、実に興味深い。監督はもちろんのこと、少なくとも衣装デザイン(『ドラキュラ』の石岡瑛子)とオブジェクトのデザイン、そしてカメラの三人は相当深く連携して仕事をしていたと想像する。
その仕事に拍手。こういう映画がもっとあって良い。