二次大戦中に実在したソビエトの狙撃手、ザイチェフの戦いを描く。
ジュード・ロウだから見た。その一言。
彼はこのところ引っ張りだこの俳優だ。久々に登場した実力のある美男子系新人という扱いになっている。なで肩で、そのため首が長く、胸板はあくまで薄く、体はヒョろい。ガニ股でひょろひょろ歩く『リプリー』のディッキー役がまあぴったりはまっていた。僕は『GATTACA』で見て以来、これはと思って追いかけている。いい俳優だと思う。
ただとりあえず兵隊役に合うはずはない。まあ本作では新兵役なので、ある程度違和感は薄かった。それが救いと言えば救い。
ジュード・ロウについてはともかく、この作品は余り内容についてコメントしたくない部分がある。いまいちなのだ。筋書きもなんというか判りやすく、いや、判りやすいのがいけないわけじゃないが、奥行きがないのだ。少なくとも彼は偶像化されつつある自分の姿には苦悩しても、人を狙撃することにはそれほど苦しんでいない。涙を流しながら引き金を引くわけではない。
結局のところジュード・ロウ観賞映画だと思う。9割がたスクリーンに登場する、まさに出ずっぱり状態。時おり見せる悲しげな表情はきっとファンのココロをびしびしと撃ち抜いているのだろう。
ただ、その戦場シーンはここしばらく戦争映画などを一切見ていなかった僕には衝撃の強いものだった。
冒頭のオオカミを氷原で待ち伏せているシーンは実に寒々しいシーンで、個人的には好みだ。しかし続く貨物列車での移動のあたりから徐々に雰囲気が悪くなっていく。列車から降ろされると、そのまま激烈な戦場シーンに突入する。
CGなのだろうが、かなり細かく人間粉砕シーンや血煙が加えられていて、音とあわせて実に圧迫感を感じる。知人に『プライベート・ライアン』のオープニング30分も怖いと聞いてすぐにビデオを借りて見たのだが、こちらも劇場で椅子にくくられて見せられたら、ちょっとたまらないという種類の映像だった。
これらの戦場シーンについては『プライベート・ライアン』のレビューで書く。