ロンドンの裏世界に暮らす男たちの悪夢の一週間を描く。
サイコーに良くできた映画の一つだ。はやくも今年最高の一本に遭遇したような気がする。
ブラッド・ピットがパンフレットでも真ん中に来ているが、これは完全に宣伝用で、彼はこの作品ではチョイ役だ。そして彼はキタナイ。実にコキタナイ。これがまた合うのだから不思議な俳優だ。
役の上でも彼は訛りがひどく喋ってる言葉が全くわからないという男なのだが、僕の耳では一から十までグニャグニャに聞こえてさっぱり意味不明だ。彼は『12 monkeys』でも同様の良く分からない役をやっていたが、そういう役が実に違和感なく合う。
発音と言うと、イギリス映画だけに発音が米語ではない英語だった。(別に英語が得意なわけじゃないけど、それでも聞き慣れてるのは米語の方。)
それにやっぱり着ている服がそれなりに英国風。このあたりアメリカ映画とは違う。逆にニューヨークのオッサン役は滅茶苦茶派手なシャツを着せられていて笑える。
見ていた劇場に英語を喋る外国人が一人いて、わけの分からないところで笑う。セリフを聞いててもそれほど笑えるわけじゃないと思うんだけど、どうも彼らのセンスはよくわからない。まあ西欧の人には多く受ける箇所があるんだろう。僕が一番好きになったのはニューヨーカーがコンコルドに乗って往復するシーンで、数カット 2sec ほどで大西洋を渡る。これが実にいい。
全体にギザギザしたカットが多用されて、カメラの動きも楽しい。こういう映画がもっとあって良いと思う。
因みに女っけはほぼ全くない。女性キャストってほとんどいない。双子の若いおねーさんが出てくるが、殺し屋風大男の両脇に並んで座る奇妙にシンメトリックな絵が印象に残るくらい。あとは真っ黒。
非常に複雑なストーリーで、複数の筋が同時並行に少しずつ絡みながら進んでいく。非常に分かりにくいが、だからと言ってこの映画を二度見てはいけない。恐らく牛乳パックを投げてガチャーンといくあの数分で「おおここで交差するのか!」という感覚こそが本作のミソなのだから。
最後にこの映画、オチはどうなるのだと思ってドキドキしていたら、見事にコンコルドでブッチぎり。おお、ブラボー!
筋書きの動きと交差の具合などで『パルプ・フィクション』と比べる人が多いかと思うが、どうせタランティーノを引き合いに出すなら、このラストの切り具合を『Four Rooms』と比べてくれい。