幽霊に会いたいですか?ホラーの形式を取っているが、主題が何なのかよくわからない不思議な映画。
冒頭、温室の中を三人が会話しながら移動するシークエンスは、その独特のカメラワークがぴたりと決まってすごく心地よいシーンだ。ああ、黒沢清の映画を見に来たんだなと実感する。
だが、あとがいけない。幾つか以上メッセージの断片というか、黒沢清の思考の入口になりそうなキーが(わざとらしく)置かれているのだが、深読みできない僕にはかえって辛い。観客を置き去りにし過ぎている。
どうしてここまで伝わらないメッセージなのに、ストーリーだけは普通に追ってしまったのだろうか。セリフも含めて実に映画的と言うか、作りものっぽい。伝わらないテーマに分かりやすいストーリー展開の組み合わせは全体を安っぽくしてしまう。
ところで二度ほど出てくるバスの車内シーンは『CURE』でのそれとそっくりだ。よほど気に入っているのかなあ。僕にとっての黒沢清はこの『CURE』が初見だった。これが実に良かった。トイレの中で首を切り裂かれた男と洞口依子の絵は忘れられない。ノイローゼの妻が玄関で首を吊る幻想も、ラストシーンも、何もかも好きだ。
どうやらこれはまずいパターンだ。『FRIED DRAGON FISH』を超える岩井俊二を待ち続けているように、僕は黒沢清の映画を見続けなければならないのだろうか。