突然悪魔にとり憑かれた少女を救うために、神父は悪魔祓いの儀式を執り行う。
実はこの作品についてはちゃんと見た記憶が無い。もう30年近く前の作品で、僕がまだ小学生の頃に話題になっていたように思う。もちろんショック・シーンが多く取りあげられるホラー映画として、だ。
かなり後になってのテレビ放映もあったと思うが、僕にはほとんど記憶が無い。『遊星からの物体X』と同様、初見ではきっと強烈な印象が残ったはずなのだが、覚えていない。実は今回のディレクターズ・カット版が初見なのかも知れない。
たとえ見ていたとしても、記憶に無いなら初見と同じだ。そして初見を今劇場で果たせたことを良かったと思う。ビデオなどで見なくて良かった。(まるで『ファンタジア2000』のようだ。)
実にしっかりした作品だ。まるで普通の物語重視の映画と変わらない演出で、ショック・シーンが出てくるまでの前半部分では、本当にストーリーの流れに引き込まれてしまう。少なくともホラーだと言うことはすっかり忘れてしまうだろう。冒頭の発掘シーン、暗い穴の中に手を入れるあたりで「来るぞ来るぞ」と身構えてしまった自分のアサハカさがナサケない。
実に静かで、寒々しく、非情さを感じる映像だ。その中をゆっくりと進む物語は非常に現実的で、これから始まる非現実的な悪魔憑きのシーンに現実味を裏張りしている。この背景なしには、少女がとり憑かれた後の、母親の苦悩、神父の葛藤などがすべて茶番となってしまう。
これは実に格調高き映画である。その雰囲気、その緊張感には自宅のビデオでは不十分だ。劇場に行って見るべきだ。暗闇の中、小さな椅子に体を預けて、あなたの空間と時間をそのフィルムにささげて欲しい。