宝塚歌劇 宙組公演
レビュー・アラビアンナイト『砂漠の黒薔薇』
作・演出 酒井澄夫
スペシャル・レビュー『GLORIOUS!!』
作・演出 藤井大介
宝塚大劇場 2000年1月30日(日) 11:00
宙組トップの姿月あさとさんの退団サヨナラ公演でした。
当然、チケットをとるのは大変でした。ぴあの前売りはあっという間に売りきれてしまい、一緒に行く知り合いに頼んだのですが買えませんでした。電話での申し込みも全然つながりません。私には立ち見のチケットを買うのが精一杯でした。
当日、立ち見の入場時刻まで時間があるので、それまでグッズの買い物にうろうろしていました。しかし!予定より早く入場していて立見席も後ろしかあいていない。背の低い私は不利。当然、人と人の間をちょろちょろしか見られなかったのでした。
それにしても、サヨナラにしては実にさらっとした舞台で、ちょっと物足りなかった感じがする。
私は姿月さんの素晴らしい歌声が好きなので、歌をいろいろ聴けたのはうれしかった。
しかし、『砂漠の黒薔薇』の何と簡単な先が読めちゃうストーリー。きらびやかなセットや衣装はいいけれど、ターバンやらでほとんど顔が見えなくてつまらないし、お姫様の存在感が薄い。おまけに主人公二人の絡みも少ないし、二人の惹かれあう過程もさらりとしてしまっていた。2番手・3番手の男役さんももっと活躍する役、あるいは悪役をやってほしかった。ま、見方によってはこれが宝塚?うん、きっと思いっきり宝塚らしい作品なんだろう。
『GLORIOUS!!』の歌は皆すばらしいけれど、こちらは宝塚らしさが変られっぱなし。お決まりの新人さんによるかわいいロケットはただのバックダンサーのよう。ラストの大階段から皆が歌いながら降りてくるのも変えられてしまい、「え!これでおしまい!」と、叫びたくなる。
宝塚も変わらなくちゃ、という意見も聞くけれど、宝塚らしさは失ってほしくない。濃い化粧、大きな羽、大階段、くさーい(ファンの方ごめんなさい)お芝居…でも、女性にしかできないムードある男役さん達。これこそ、宝塚なのだ!これで姿月さんもお別れ。私はきっとまた宝塚と縁遠くなるのでしょう。
私が宝塚歌劇を初めて見たのは、はるか二十数年前の小学生のときでした。7才年上のその当時関西に住んでいた従姉妹に誘われて行きました。私は昔っからおとぎ話など、夢のような世界が大好きだったので、あっさりと宝塚のファンになりました。化粧が濃くても、芝居がくさくても、宝塚は夢の世界へと連れて行ってくれました。
その時ファンになったのは、安奈淳(知っている人がいるかしら?)。どちらかというときゃしゃな感じで、やっぱり歌がうまくて声が好きだった。そう、派手な顔した男役さんばかりではありません!安奈淳のあたり役はオスカルでした。こんな男性は現実にはいないんだけど、こんな人に好きって言ってもらいたいー!となってしまうのが、宝塚の醍醐味です。
安奈淳があっという間に退団して、私の宝塚観劇は終わりました。他に見たいスターさんがいなかったので…
その後、大地真央やら、杜けあきやら、一路真輝さんなどのスターのニュースは見ても、いまいちピンとこなかったのです。しかし、これはテレビで舞台を見られなくなったのが原因かも(昔は宝塚番組があって、結構見られたはず)。
衛星放送で舞台を見られるようになり、その頃騒がれていた天海祐希さんの舞台を見た。衝撃!なんて素敵な人なんだろう。その甘い微笑みにくらくらしてしまった。また、この時の2番手さんの悪役がぴったりだった。この時の月組全部を好きになった。久しぶりに宝塚まで見に行こうかとも思ったけれど、なんせ天海さんの舞台はプラチナチケットと呼ばれ、手に入らないらしい。結局あっという間に退団で、見に行く努力をするひまもなかった。
しかし、この月組の中にきらきら光って見える人がいた。そう、それが姿月あさとさんだったのだ。歌声もぐっとくるし、その美しさも素晴らしくてひそかにチェックして見ていた。
その姿月さんが新しくできた宙組のトップになったと知って、舞台が見たい!と再び宝塚への思いがよみがえってきた。そうこうしている間に宝塚ファンと知り合い、『エリザベート』を見に行こうということになった。しかし、である。この作品は以前にも上演され、素晴らしいと評判らしくてまったくチケットがとれなかった。この知人は知り合いからチケットをもらえるので見にいったらしいが、それは素晴らしいと絶賛していた。ビデオが発売になるとすぐに買って貸してくれたのでダビングした。
この『エリザベート』がすごかった。姿月さんの妖しく美しいお姿と迫力のある歌声。もう、何もかもが素晴らしかった。今でも自分でチケットをとる努力をしなかったことを後悔している。
そこで、次の作品は是非、とたのんで『激情』『ザ・レビュー99』を見に行った。
やはり生の舞台を見るのは気持ちがいいし、2階最前列の中央で見せてもらったので大感激だった。また、『ザ・レビュー99』はその昔安奈淳の舞台で見たものの再演なので(レコードも持っている)ついつい一緒に歌を口ずさみ、体が動く。『激情』はカルメンが目立ってしまうけれど(とってもお美しいので)、二人の宝塚にしてはきわどいラブシーンや姿月さんの哀愁のただようお姿にうっとりしていました。
今、次なるスターを探しているけれど、なかなか心に残る歌声を聞けない。でも、せっかく宝塚の世界を思い出したので、もうしばらくは覗いていてもいいかな、と思っている。チェックしているのは月組と雪組。熱烈なファンにはなれないけれど楽しみたいし、こういう一般のお客にも行きやすい宝塚であってほしい。