現代的ヴァンパイアものにアクションのふりかけを施した、恐らくは低予算の作品。荒削りだがそこがカッコ良い。
久しぶりに感激した作品だった。とにかくカッコ良いと思えた作品。劇場で見る事が出来なかったことが残念だ。
実にカッコ良かった。まずオープニングタイトルで「これはなかなか良いなあ」と思ってじっくり見る体勢になった。そのまま冒頭のシーン、そして血のシャワーのシーンまでまばたきするのも惜しいくらいに注視した。美しい。カッコ良い。
構図などはそれほどとは思わないのだが、何より光と影の動き、そしてカットに引き込まれた。ガガガっと乱暴な早回しをあちこちに挿入しているのだが、それが厭味にならないのがセンスの良さを示していると思う。
相変わらず情報にうといので、僕はこの作品がヴァンパイアものだと知らずにビデオを借りてきた。そう、パッケージの裏書きすら見なかったのだ。だから血のシャワーの必然性を全くわからずに見た。そうする事でいっそうこのシーンがあざやかに、美しくなった。
わけもなく降り注ぐ血と光線のシャワー。何故か僕の記憶の中では、そこに色がなく、映像はモノクロームだ。激しい音楽とフラッシュ。暗い室内と白い背景、白い服に降り掛かる黒い血。ああこのシーンだけでこの作品は見る価値があると、そう思う。
このあと突然Day Walkerと呼ばれる男(ウェズリー・スナイプス)が入ってきて、銃を乱射するアクションシーンが始まる。ガン+格闘のアクションそのものは決して悪くはないのだが、感動するほど良くもない。きっとウェズリー・スナイプスの体の重さのせいだと思う。香港カンフーアクションの鋭い動き(例えば奇しくも同じタイトルの『ブレード 刀』)に比べると鈍重な事は隠せない。
ただ、冒頭のアクションはカットのうまさもあってまずまずカッコ良い。やられたヴァンパイアが細かく崩壊するところなど結構良い処理がされていたりするのだが、問題は見ているうちにこちらが慣れてしまう事もあって、徐々に印象としての鮮烈さがなくなってしまう事だ。ちょっと残念。
後半にシャワーシーンを超える映像が登場せず、むしろストーリーを追ってしまった事が個人的には残念だ。
ただこの二点あたりに工夫があれば、全編を通して素晴らしくテンションの高い作品になったのにと思う。そんなことを言ってると作品として成立しなくなるのだけれど、それでも個人的にはそう思える。
似た雰囲気を感じる作品としては『SPAWN』が浮かぶ。これも独特の映像感覚(特に僕はCGに引っ張られたのだが)がザクザクっと荒削りで光っていた。個人的にはこうした削り口を持つ映画に魅かれているのだろうと思う。だが残念な事にどれも暗い。明るい色彩でこうした破天荒さを出せる作品を期待したい。
ちょっと脱線だがオープニングタイトルにトレイシー・ローズの名前があって驚かされた。いまや伝説的とも言える往年のポルノ女優である。僕はちょっと世代が違うので彼女の顔を見分ける事が出来ないのだが、後で聞いたら予想通り、イケニエを食肉加工場に連れていった女がそうだったとか。確かに強烈な印象だった。なんというキャスティングだろう。
更に脱線して申し訳ないがどうしても書きたいので御容赦。高橋葉介の漫画で確かタイトルは『血!』という短篇があった。これはまさに乾いた人民が血のシャワーで潤うという恐るべきイメージを描いたものだが、僕はこの映画の血のシャワーシーンを見た瞬間にこのことを思い出してしまった。
漫画では当然に色がなかった。黒い血が降っていた。この映画でも同じ。黒い血だ。僕の中では、何故か黒い血が降る。