ジャック・クロウは、ローマ教会に雇われるヴァンパイアハンター。ヴァンパイアの首領である魔鬼・バレックを追い詰める為に、チームを組んで吸血鬼狩りをしている。そんな、ヴァンパイアの巣を一つ潰したある日、モーテルで仲間達と騒いでいると、手下を殺されたバレックが現れ、ジャック、モントヤ、娼婦カトリーヌを除いた全ての人間が殺されてしまう。その上、カトリーヌはバレックに噛まれていた…。
『遊星からの物体X』『ハロウィン』『マウス・オブ・マッドネス』など数々のホラー作品、アクション作品を残すジョン・カーペンター監督によるアクション・ホラー。
予想通りの作品であった。今までの作品同様、B級の香りを漂わせた作品。
キャラクターが、なかなか面白かった。メインとなるのは、親の復讐の為にヴァンパイアを追い続けるジャック、逆に教会への復讐を誓うバレック、自分がヴァンパイアに変貌していく事に恐怖するカトリーヌ、彼女を愛してしまうジャックの相棒モントヤ、教会の考えに忠実すぎてイマイチ世間知らずの神父。特に、ダニエル・ボールドウィン演じるモントヤは、人情味のあるキャラクターで、見せ場がたっぷり。ほとんど、主人公なみの活躍だ。いや、正直な所、キャラ的には主人公を喰ってしまっている。
また、これら各キャラクターの描き方が分かりやすいので、ストーリー上の関係を把握しやすかったのも良い。
このキャラクター間の関係の分りやすさは、ストーリーの中にもちゃんとおさまって、微妙な緊張感を作り出し、興味をラストまで引っぱってくれる。
ただ、確かに飽きる事なく見る事はできたが、その展開に予測を超えた驚きはほとんど無かった。ストーリーの規模は小じんまりとして、広がりを感じさせないし、ラストのジャックとバレックの戦いも、少々淡白に感じる。
独自の映像美と言われるビジュアルにしても、私には特に凄いとは思えない。実に個人的な好みの問題かもしれないが、この監督の映像は昔から苦手だ。色使いや構図は、面白いと思える部分もあるのだが、なにか絵的に平板な印象を受ける映画が多い。カーペンター作品の主要な撮影監督の一人、ゲイリー・B・キッビが今作を担当している事も要因の一つかもしれない。彼の担当作品は『ゼイリブ』『マウス・オブ・マッドネス』『光る眼』などで、奥行きを感じさせない映像を取り続けている。逆に、もう一人の主要な撮影監督であるディーン・カンディは、『ハロウィン』『遊星からの物体X』など比較的重たくて奥行きのある映像を見せてくれる。
ホラーとしての怖さも、感じる事ができなかった。この映画の中で得られる緊張感は、恐怖によるのでは無くて、人間関係やアクションによるものがメインだ。仲間の惨殺される様子や、ヴァンパイアの退治の仕方など、ショッキングなシーンは幾つかあるが、恐怖描写へは至らない。これらのシーンには、湿っぽい陰惨さや不気味さよりも、乾いたスプラッターという感触を受けてしまう。ヴァンパイアがモンスターとしての存在感より、事情を抱えた悪役という印象が強い事も、「怖さ」=「わけのわからなさ」を削いだ原因かもしれない。
とにかく、出ているキャラクター達の輪郭がはっきりしているし、展開にもほとんど無駄が無いので、単純に楽しむのには良かった。ホラーよりも、アクション映画を期待してみれば、楽しい映画だと思う。