Cinema Review

スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス

Also Known as:STAR WARS Episode I - The Phantom Menace

監督:ジョージ・ルーカス
出演:ユアン・マクレガーナタリー・ポートマンリーアム・ニーソンジェイク・ロイドサミュエル・L・ジャクソン
音楽:ジョン・ウィリアムス

映画におけるスペース・オペラの金字塔。全9話構成の最初の一話。

珍しく先行ロードショーで見ることができた。そのせいかも知れないが、冒頭あのテーマが鳴り響き、あの『STAR WARS』のロゴが出てきたときに、期せずして劇場内では拍手が湧いた。もちろん僕も大きく手を叩いた。
続いて例のスタイルで物語の前説明が流れていき、それが終るとフレームがぐっと下を向き、宇宙船が飛んでいく。ああ、何もかも同じだ、STAR WARSが帰ってきた。そう思った。

僕がSTAR WARSシリーズを見たのは中学生の頃だろうか。ロードショーではなく二番館での再上映だったはずだ。この作品は『2001年宇宙の旅』と並ぶ金字塔だと思う。強烈な印象を残して、その後のSF映画の方向を決定した。少なくともSF映画はすべてこの作品と比較されたはずだ。(そう思えば『2001年宇宙の旅』のショックはすさまじいものだったろうと想像する。)
何年も掛けて前シリーズが作られ、これが全9話のうちの4,5,6話になるとのこと。今回の作品は1,2,3話に相当する三作の第1話で、これをEPISODE Iと呼ぶらしい。前シリーズはEPISODE IV,V,VI となる。今度は6年で三話作って見せるとルーカスは言っているが、どうなることか誰にも判らない。

ある意味連作というのは安心できるところがある。僕はSTAR TREKを見ないのだが、そのリピーターもやはり今回僕がSTAR WARSで感じたような安心感を得ているのだろうか。その枠の中でどうやって物語を作り込むかという点で時代劇にも通じるかもしれない。シリーズものは成功と失敗に大きく分かれる傾向があるが、それが何によって決まるのか面白くもある。少し違うが『カリオストロの城』などは枠組だけを舞台として残して、キャラクターも何もかも見事に飛ばして、成功した。
しかしさすがにこの作品はそうはいかない。この続きとなる最初に発表された前シリーズにつながなくてはいけないのだ。後のダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーが今回純粋に正義の味方として子役で登場する。ここからどう悪役 1 号に変化していくのかが楽しみという不思議な位置付けだ。

個人的な感想を書かせて貰うと、今作はまず散漫な印象を受けた。いろんな物語の断片とも思えるような要素が散りばめられており、焦点が定まらない。ハリウッド映画的判りやすさに欠ける進行だったと言ってもいいかも知れない。つまりSTAR WARSというスペース・オペラにはもっと単純な構成が似合うのだ。

今シリーズの恐らく中心人物の一人になるべきアミダラ姫役にナタリー・ポートマンを選んだのは正解だろう。ギャラの高い俳優を余り使いたがらないルーカスにしては珍しく、大量に有名俳優が出ている中で一歩も引かない存在感がある。彼女は『LEON』で見て以来、『マーズ・アタック』『HEAT』『ビューティフル・ガールズ』などを見てきたが、なかなかいい感じだ。この先4年(予定)の2作が待ち遠しい。前シリーズのレイア姫(キャリー・フィッシャー)がちょっとおばさんっぽかったせいで『ジェダイの復讐』あたりでは辛いものがあっただけになおさらだ。
若き日のオビ・ワンに扮するのはユアン・マクレガーだが、僕は彼の出演作を見た事が無い。

殺陣(たて)が非常に良くなった。前シリーズはなんだか素人チャンバラ的なぎこちなさを感じたのだが、今回はカメラワークも良く、スピード感溢れるいいアクションだったと思う。殺陣師が良くなったのだろうと単純に思う。撮影をもう少しうまくすれば重みがついてもっと良くなりそう。
CGに関しては良くも悪くもILMだなあと思うばかりで、これは余り好きになれなかった。個人的な今のお勧めはやっぱりDigital Domainだなあ。
それから、そう、これはILMの責任ではないが、Full CGで描かれるロボット軍団がまるで往年の竜の子プロアニメーション、『キャシャーン』に出てくるアンドロ軍団にそっくりなのだ。「ヤルッツェブラッキン」と叫びこそしないが、しかしこれには笑ってしまった。

Report: Yutaka Yasuda (1999.08.23)


[ Search ]