Cinema Review

ビッグ・ヒット

監督:カーク・ウォン
出演:マーク・ウォールバーグ、ルー・ダイアモンド・フィリィップス

メルビンは腕の立つプロの殺し屋だが、どうにもお人よしで気が弱い。仲間には報酬を横取りされ、婚約者や愛人には金を勝手に使われ、それらの心労のお陰で胃を痛めている。そんな時、仲間の一人 が、誘拐話を持ちかけて来た。最初は断わるメルビンだったが、婚約者に渡すはずの金を愛人に渡してしまった事で、急な金が必要になり話に乗ってしまう。だが、誘拐した社長令嬢はボスの親友の娘だった…。

ジョン・ウー製作の馬鹿アクション映画。
実に楽しい映画だ。テンポの良さとスピード感で映画が突っ走って行く快感を味わえるので、飽きたりダレたりすること無く楽しめた。
アクション部分はアイデアに満ちていて、気持ち良かった。ブレイクダンス風にクルクル回りながら周囲の敵を撃ち倒したり、ワイヤーで飛び降りながら銃を撃ったり、レンタルビデオ屋の中でビデオの棚を倒しながら格闘したり、森の中を車で追い掛けられたり。

と書きつつ個人的には、実はアクション映画と言うより馬鹿コメディーとしての快作だったのだが。いわゆる馬鹿映画は、作る人が勘違いすると、ただイライラさせるだけの本当にバカバカしい映画になってしまうが、この作品は良く出来た娯楽作品になっていると思う。非常に計算して作られた感触を受けた。鑑賞に耐え、なおかつ面白い馬鹿映画は、『スターシップ・トゥルーパーズ』同様「楽しませよう」という目的意識を持たなくては成立し難い(ただし奇跡の様な作品もたまには有る…)ものなのだとつくづく思う。テーマ性や中身が無いと思わせるストーリーも、アクションと笑いをちゃんと成立させる為に設計されているのだから、文句を言ってもしょうがない。

そして、何より出て来るキャラクター達の実に間抜けで愛らしい設定が、この映画の一番の魅力なのではないだろうか。
まず、主人公・殺し屋メルビンの情けなさっぷりに感動。凄腕の殺し屋が、誰にも嫌われたく無いが故に、周りの人々に良い様に使われているなんて。その情けない感じを、マーク・ウォルバーグは実にほがらかな印象に演じていて楽しい。
ルー・ダイアモンド・フィリップス演ずる殺し屋の、お調子者っぷりには大笑い。図々しくて、簡単に仲間を裏切る様な奴なのに、夢は白いクルーザーを手に入れる事って。彼もまた、その絶妙な憎み切れない雰囲気を、コミカルに軽く演じている。過去の出演作品と見比べると、その落差・変貌ぶりに驚かざるを得ない。
残酷な描写も有ったりするのだが、間のヌケた部分を強調する事で、ふっと可愛らしく感じさせてキャラクターに観客を引きずり込み、その上楽しい作品を作る事に成功している様に思う。
また、脇のキャラクターもインパクトが強くて面白かった。特に、レンタルビデオ屋の店員。普段、おそらく気弱で神経質なくせに、『キングコング2』を延滞して返却しないメルビルに対しては異常に強気な彼。客が目の前で殺し合いを始めて、ヒィーヒィー言いながら逃げまどう彼。最後に「ボ、ボクのお店がぁー」と叫ぶ彼。ばかばかしくて、情けなくて実によろしい。

という事で、馬鹿アクション・馬鹿コメディーが好きな方は、是非。逆にシリアス路線のアクションが好みだと、白けてしまって辛いと思うので御注意を。

Report: Jun Mita (1999.07.23)


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