Cinema Review

遊びの時間は終わらない

監督:萩庭貞明
出演:本木雅弘石橋蓮司、原田大二郎、斎藤晴彦

町の小さな銀行が、強盗に襲われた…という設定で、地元警察が地域住民にアピールする為にマスコミを呼んで、筋書きの無い防犯訓練が始まった。警察の手際良い犯人逮捕を見せつける事が目的だ。が、しかし、犯人役の平田巡査の犯人としての的確な判断と行動により、どんどん事態はこじれ、エスカレートして行ってしまう…。

ミナミの帝王』シリーズを監督してヒットさせている萩庭貞明監督の第1回監督作品。
実に面白い。
ストーリーは確実に面白いし、その構成も凝っていて楽しい。
テーマというのは、純粋なエンターテイメント映画なのであまり意識しなくても良いと思うが、原作のある作品だけに、しっかりと「管理社会の滑稽さ」等が描けていて、それがまた、観客に爽快さや心地よさを提供する。
役者の演技も、たまに怪しい人はいるものの、全体的には巧者が揃っていて、安心して観ていられた。特に署長を演ずる石橋蓮司の怪演は、一見の価値は有ると思う。ちょっと浮いている程では有るけれど、中間管理職の悲哀を面白おかしく、楽し気に演じている。
また、映像の演出、音楽の使い方も娯楽作品としてのラインを踏み違える事なく、状況を盛り上げる為に機能していてそれに乗せられる事が気持ち良い。

と、これだけ誉めているだけに、実に分りやすくて十分楽しめる映画なのだけど、何故か、なにかもう一歩欲しかったと思ってしまう。
まずは、ちょっと尺が長い事。全体のテンポが良いだけに、数少ない冗長なシーンが逆に目立ってしまった。もうちょっと削れたのでは?と思う。
次に、ちょっと画的な面白さには欠けるかなと。全体的に映像にテレビドラマに近い軽い印象が有るし、チープな画も有るので…。
最後は、やはりあのラスト。あそこで切るのは分るのですが(おそらく原作もあぁいう終わり方なんでしょうね)、何だか取り残された気がして寂しいんですよね。その後が気になると言うか。盛り上がっているだけに、まさに特別報道番組を一人だけ見逃した状況に陥ってしまうので辛かった。続きを見せてくれ!という感覚。
観ながら、『狼たちの午後』を連想していたので、ちゃんと決着が付くと勝手に思い込んでいた節もありますが。

欲張りな、重箱のスミをつつく様な事を書いてしまいましたが、この作品はそれ程良くできた娯楽作品で、普通に色々な人にお薦め出来る作品だと思います。

Report: Jun Mita (1999.06.23)


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