高知、少年は遠洋漁業の町に生まれた。彼の祖父は鯨を捕っていた。今はもう捕ることが出来ない。少年は鯨を捕りたいと思った。
残念だ。絵的にはかなり好きな部類に入るべき作品なのだが、ちょっと駄目だった。幽霊もしくは妖精的な何かが出てくるファンタジー的なストーリー展開としては、僕は『月とキャベツ』『水の中の八月』などが印象に残っている。絵についても、どちらも好きだ。
似たもので僕が駄目だったものとしては『ACRI』がある。そしてこの作品は『ACRI』と同じように、嫌いではないはずの絵なのに入り込めなかった。気に入らなかった。見ている途中で、「ああ『ACRI』に似ているなあ、困ったなあ」と思ったくらいだ。僕の大好きな透明な青色に満ちた映画なのに。何がこの好き嫌いの分かれ目になるのだろう。気になる。
とりあえず思いついたことを書いておこう。遠藤久美子がいまひとつだった。決して悪くはないのだが、光るものがない。どうせ高知でやるんだったら高知出身の広末涼子にしたらと短絡的に思ってしまう。馬渕英理何もひそかに期待していたのだが、何というか不発に終ってしまった感じがする。雰囲気あっていいなあと思ったのは脇の永島瑛子で、どっかで見た感じだなあと思ったら、それは『絵の中の僕の村』の倍賞美津子だった。どっちも高知の映画で、土佐弁が良く出てくる。多分二人とも高知出身というわけじゃないと思うんだけれど、妙に土佐弁が柔らかくいい感じで聞こえた。
地方の映画は良い。『萌の朱雀』など御当地の人が出ている映画以外は、そこの人が聞いたら仰天するようなイントネーションかも知れないけれど、僕の耳にはいずれも優しい。僕は京都で生まれて京都で育った。僕が聞いて、ゆったりした気持ちになれる京都の映画が見たいと思う。京都出身の俳優さんで固めて、ね。
ちなみに『絵の中の僕の村』はキラキラした絵がすごく良い。好きだ。こういう映画がもっとあっていい。