スピード・マニアのタクシー運転手と、ダメダメ新米刑事。全く接点がない筈の二人が、何故か強盗団を捕まえる話に。超高速カーアクション。
プロデュースにリュック・ベッソンがついていると言うので見る気になった、というのが正直なところ。予告編を劇場で見た時に、うん、これは面白いかも、と確かに思えたのだが、それでも劇場に足を運ぶかどうかきわどいところだった。しかしベッソンと予告編が僕の背中を蹴ってくれた。
僕はベッソンの映画に溢れるスピード感が好きだ。サブウェイのオープニングで、クリストファー・ランバートが逃げるカーチェイスなどだ。このスピード感は実に気持ち良かった。(ベッソンの場合は、むしろ極端なスローで撮る場合も多いが。)
この作品の予告編で、プジョー406がガンガン走るシーンがあり、その姿とスピード感が僕にこの『サブウェイ』のチェイスを思い出させてくれた。だから見た、と言ってもいい。
期待通り、全編カーアクションが散りばめられている。100分を切るくらいの中編だが、内容的にはそのくらいが丁度良かったと思う。『フェティッシュ』が少し長過ぎたせいで息切れを感じた僕としては、このサイズで切った監督に拍手だ。
それに、ひたすらカーチェイスでおしまい、と言うわけではない。楽しいエピソードがあちこちに散りばめられている。運転手はいつまでたっても恋人と最後までいけないし、ダメ刑事はほんとにダメダメだし、そいつが惚れているドイツ人上司(もちろん女性)はやたらにゴツい(モデルさんらしいが)し、強盗団「メルセデス」対策に奔走するフランス人刑事部長は偏見に満ち満ちたドイツ人ぎらいで、作戦につける名前はヘンなものばっかりだ。
ただこれらのエピソードが、作品中の骨となるカー・チェイスにひっかかるようなもので無かったのがちょっと残念だ。最初のメルセデス逮捕作戦で、ダメ刑事が車のドアを不用意に開けて現場を大混乱に陥れる場面があるが、それなどはちゃんと車に絡んでて、結構気持ち良かったのだが。
他のエピソードはチェイス・アクションとちょっと遊離し過ぎてて、タイト感を損なったかなあと思う。断片的なエピソードが散漫になってしまったと言ったらいいだろうか。(断片的なエピソードをうまくまとめている例としては『パルプ・フィクション』かな。曲芸的だけど。)
もう少し不満を言うと、最後のメルセデスとのチェイスはもうすこし緊迫感を出せたと思うのだが、僕としては今一つ盛り上がらなかった。何故だろう。オープニングのスクーターによるブッ飛ばしが(ゴールして前転したのにはドギモを抜かれた)、すごく気合いが入っていてテンションが高かったのと対照的だ。次回作はこのあたりがうまくバランスしてくれることを期待しよう。