Cinema Review

らせん

監督:飯田 譲治
出演:中谷 美紀佐藤 浩市鶴見 辰吾真田 広之佐伯 日菜子

呪いのビデオはまだ生きていた。その謎を解くために一人の医師が奔走するが、やがて医師も呪いの輪に取り込まれてしまう。

なんだろう。なんともまずい感じだ。
リング』のショックの後に見るからなのか、実に怖くない。ホラー映画としての怖さを全く感じないのだ。『パラサイト・イヴ』はホラー小説として書かれたわりに怖さを感じずに読め、映画もその通りエンタテイメント的に見てしまった。原作は後半速度をあげると共にテンションにおいて失速したが、映画は全体を通して今一つだった。この『らせん』はそれに近いように思う。
つまり盛り上がりがないのだ。

映像的には幾つか好きなところがあり、悪くない。特に冒頭から真田広之と佐藤浩市が対面する病院のシークエンスあたりまでは、導入部としては非常に良いと思う。静かで、硬質な、白い画面にどんどん引き込まれる。
しかしそれに続く後半までに、その引き込まれる感じはなくなってしまう。全体に謎解きの物語なのだが、それが今一つ見ている僕を一緒に連れていってくれない。追いていかれるのが嫌で追いつこうとしても、そこには傍観者の席しかないのだ。これは辛い。

つまり感情移入できなかったということなのだろうか?
リング』では、実に怖い疑似体験が幾つも用意されていた。画面に映っているその時の主役と共に、じっくりそれを味わわされる。対して、この作品ではそれがほとんどない。一体感がないと言えばいいのだろうか。

思うにカメラの位置が傍観者的で平板だったのではないか。物語やセリフ回しが説明的に過ぎたからかも知れない。ラストが余りに即物的で、怨念などという話の筋から外れてしまったからか。
しかし確かめるためにもう一度見ようとは思わないので何とも言えない。
中谷美紀も佐藤浩市も嫌いではないだけに、残念だ。

佐伯日菜子が幽霊役だが、怖さの点では顔を出した分だけ『リング』に負けてしまったようだ。『リング』のラストで這い出してきた幽霊はもうめちゃくちゃ怖かったが、この作品で出てきた時は、ああ佐伯日菜子だと思ったせいもあってか、妙に安心してしまった。
ちなみに『リング』で僕は佐伯日菜子が幽霊役かも?と書いたけれど、あれは違うらしい。伊野尾理枝さん(恐らく演劇実験室・万有引力所属)という舞踏家さんだそうだ。確かに妙にクネクネした、怖い動きだった。ぜひティム・バートンに見せて、次の映画ではリサ・マリーの代わりに使ってもらいたい。

(ホラー映画のレビューなのに笑い話で終ってしまった!)

Report: Yutaka Yasuda (1998.09.01)


[ Search ]