同じ時、別々の場所で、若い男女が変死する。彼らは同じペンションに皆で泊まった仲間だったことが判る。そして噂によると、彼らは呪いのビデオを見てしまったのだという。
実に怖いホラーだ。僕は普段ホラー映画を見ないのだけれど、比較的良く見ているはずの知人によると「水準を大きく越えて怖いホラー」とのこと。うーんたしかに怖かった。夜中に一人でトイレに行けなくなるパターンだ。
この映画は同じ原作者である鈴木光司による次作、『らせん』との二本立てロードショーとなっている。『らせん』では謎解き的要素が強く、ストーリー的には続き物の割りに、すべてを伏せたまま、見せないまま進む『リング』とその面では対照的な色彩を持つ。僕の趣味としてはこの『リング』の方が圧倒的に好きだ。
主演の松嶋菜々子は、前に『恋と花火と観覧車』というタイトルの、中年の上司にOLが惚れるという、なんとも僕のチェッカー回路にカスリもしない映画のOL役をやっている。いくら彼女が僕の好きなタイプだからといっても、さすがにこれは見ていない。今回は共演が真田広之ということで、合わせて見る気になったのだ。(若いころのではなく、最近の彼はなかなかいい俳優だなと思う。)
とにかく怖い映画だ。
時折、「ぎょろん」という感じの非常に神経を逆撫でる音が入れられている。これが結構神経に触って気持ち悪い。怖さ倍増薬になっている。
作品中では音楽を含めて余り音は入っておらず、比較的静かな映画になっていると思う。これに電話のベルの音や、ビデオが終った後のザーという音が大きめに響いて、そのコントラストが怖い場面で効果をあげている。
画面は比較的暗めに作られているが、それ以外は割合に自然に撮られているように感じる。ところが時々現れる怖い一瞬(例えばビデオを見終った後、テレビのスイッチを切ったら!とか、子供が夜ビデオを見てしまったシーンなど)は、非常にうまく計算されて作られており、本当に「どきいいっ」とさせられる。このギャップ。
この怖い一瞬が埋め込まれていそうな画面の「隙」が、実際何もないところに幾つも掘られていて、見ている方はつい何度もハラハラしてしまう。もちろんハラハラした挙げ句、そのうち本当に突き落とされるのだからたまらない。
そもそも角が欠けた石組みで囲まれた、今は使われていない古井戸という超古典的な設定が、どうにも僕らの忘れていた部分を刺激するようで、実にいやーな雰囲気が盛り上がる。
実に神経のすり減る映画だ。そして多分、このすり減った神経が発信する恐怖感が、この映画の狙いなんだろうなと思ってしまう。
そして恐らくは佐伯日菜子が幽霊役なのだ。恐らくは、というのは彼女の顔がはっきり映るシーンが一つもないからなのだ。エンドロールに載っていたかどうかは今一つ確証がない。次の『らせん』ではきっちりクレジットが入って顔も映っているのだけど。
佐伯日菜子はテレビ版『エコエコアザラク』などというこれまた怪奇ものに出ていたりして、どうもこういった役が多いようだ。まるで本物に見える、といった感じの彼女をこの役に持ってくるのは反則では?という気もするけど、『毎日が夏休み』で見せた、明るい、伸びやかな雰囲気が印象に残っている僕としては少し残念でもある。
ともかく、このはっきり顔の出ない幽霊女がまた怖い。最後の方で彼女がテレビから這い出してきた時なんか、んぎゃー出た出た出た出た遂に出たヨーてなもんで、実に怖かったです。はい。