小さな町の数人の男女のうち、ベトナム戦争のために何人かの男が戦争に行った。一人の男が復員してきたが、一緒にベトナムにいった友人の一人が帰還していないと知った。男は友人を捜すためにベトナムに戻る。
強烈なイメージを僕に残した映画の一つだ。チターの音が耳に甦る。
ベトナム戦争を描いた映画では他に『プラトーン』が心に焼き付いている。ありがちだと思うが、ウィレム・デフォーが僕に強烈な印象を残した。実は『ランボー』もベトナム戦争映画として印象に残ったのだけれど、続編がいただけない。
この作品では、僕の好きな俳優の一人、クリストファー・ウォーケンが素晴らしい。ナイーブで、多感な青年を良く演じている。僕は彼のこの雰囲気が好きなのだが、それがうまく出ている作品としてはもう一つ、クローネンバーグの傑作、『デッド・ゾーン』が挙げられる。優劣付け難いなあ。(クローネンバーグぅ?いや、『デッド・ゾーン』はホントにいいよ!)
デ・ニーロについてはもう言うことがない。善人でも悪人でもない、複雑な男を演じている。
冒頭の結婚式のシーンは、ロシア系のものなんじゃないだろうか。ロシア系移民が、この頃どういう状況だったのか、ベトナム戦争とどういう関係だったのか、そういう事に疎い僕にはとんと判らない。こう言う時にものを知らない自分が詰まらない。
これ以降はあらすじを追うので、まだ見ていない人は読まない方がいいかも知れない。
デ・ニーロ演じる主人公の男は、皆で戦争に行く直前に、一番の友人(クリストファー・ウォーケン)から「ベトナムで俺を置き去りにしないと約束してくれ」と言われた。男は約束した。
同じ町から戦地に来た三人は、同じ作戦で共に捕虜になった。そこでは捕虜にロシアン・ルーレットをさせる賭けが四六時中行なわれていたが、彼らはその死地を主人公の機転で脱出する。
主人公は帰ってきたが、先に帰還したはずの友人はまだ帰っていない。男は約束を果たすために、戦争終結で大混乱のサイゴンに戻る。幾つかのすれ違いの末、男は友人を見つけるが、彼は記憶を失って、ロシアン・ルーレットの賭博場で自らの命を賭けていた。再びあの恐怖と狂気の中に自分を置いていたのだ。
主人公はどうしても彼を止められず、遂に彼と共にルーレットのテーブルに座る。自分の命を失ってもいい。彼は「愛しているぞ」と言って、自らの頭に当てた銃の引き金を引く。
僕と兄がこの映画を初めて見たのは、それぞれ高校生の頃ではないかと思うのだが、兄は何年か経った後、この映画が好きだと言った。兄は余り映画を見ないのだが、その兄がこの映画を好きだと言った。「友達のためにここまでしてやれるか」と言った。
僕がこの映画を見る時にはいつでも、チターと、この兄の言葉を思い出す。
お前はどうだ?お前の約束とはどんなものだ?お前の友達とはどんなものだ?
男はサイゴンから戻り、葬式の後で仲間とバーに集まった。いたみを分け合いながら、彼らは歌う。そこは戦場ではなく、故郷であり、仲間のいる場所だ。
友人は戦争に出る前に「この町が好きだ、この町が俺のすべてだ」と言った、その町には彼が好きだった仲間がいる。帰るべき町、仲間があることは素晴らしい。