インパクトの強い内容とビジュアル的な怖さが目立ってしまうせいで本質的なメインテーマがかき消され気味なのだが、そこにはとても深く重い愛が隠されている。
『戦慄の絆』は一卵性双生児の産婦人科医エリオットとビバリーの愛の物語だが、この一卵性双生児は精神的に誰にも離せないほど深い絆で結び付いていて、たとえクレアといえども立ち入ることはできなかった。(クレアという女性を好きになったばかりに弟ビバリーは兄エリオットから一人立ちしようとし悲劇が起こる)彼らを引き裂く事は二人の死を意味し、離そうとすれば内蔵をえぐりだされるほどの痛みを覚える。最終的に分離手術をして離そうとするのだが、片方が死ぬとその恐怖によってもう片方も死んでしまったシャム双生児の結末をたどってしまうそのラストのカタストロフにこれほどの愛はあるのかとジンとしてしまった。
見事な心中ストーリーだと思う。一つの卵子が二つに分裂して対象的な性格の人間にはなったものの、やはり根本的な所はつながっていて引き離す事はできず、そして二人は同時に亡くなり、元の一つの状態に回帰していく。そこには生から死を通し、そしてまた一つのものへと戻っていく人間の生死よりもっと深い所で結ばれている絆を感じた。二人が産婦人科医だったということもなにか因縁めいている。心の痛みがそのまま映像として出てくる所もリアルでわかりやすく、怖い。