両親をなくした耕作は親戚の家に預けられ、そこから高校に通うことになった。そこには二人の従姉妹と、同い年の従兄弟がいるはずだったが、久しぶりに会った従兄弟は、まるきり女の子の姿をしていた。一つ屋根の下で、奇妙な生活が始まる。
江口寿史は、これの前作『すすめ!パイレーツ』と言うギャグマンガで一世を風靡した売れっ子だった。僕はあまりギャグマンガが好きではないので、余り見なかったが、このひばりくんは実に好きだ。ラブコメという少年誌独特のジャンルに、そのセンでは飛び切り魅力的なキャラクターをニューハーフと言う設定でほうり込んで、そこから起きる騒動に得意のシュールなギャグを散りばめた快作だ。
当時多くの作家が、江口寿史に影響された。特に彼が手を掛けて描き込んだイラスト的な少女のカットなどはたくさんの類似品を産んだ。だが今でも江口寿史の後に江口寿史は無い。そのくらい飛び抜けていた。
『ひばり君』には、実にいろんなエッセンスを詰め込んだ、それらの均衡の面白さがあると言えそうだ。どれか一つが欠けてもひばりくんは失速しただろう。何年か前に読み返してみたが実に面白い。そろそろもう一度読んでもいいなと思う。
ポップな絵柄とギャグの組み合わせの妙は、後の『エイジ』でも生きている。彼はこのところマンガを描いてないようだが、是非また描いて欲しいと思う。