23世紀の地球、ニューヨーク。タクシーの運転手は不思議な言葉を話す女を拾った。彼女は土、風、火、水に続く「第五の要素」であり、それが世界を破滅から守るのだ。破天荒スチャラカSF特撮ファンタジー。
ベッソンは僕が最も好きな監督の一人だ。(最も好きなのは、言うまでもなくデビッド・クローネンバーグだけれどね!)だからベッソンの新作映画というだけで飛びついて見た。
が、うーん、勘弁して下さい。。。
途中、謎の DJ 、クリス・タッカーが出てきて、マシンガンのようにキャーキャー喋りだしたところで僕はもう駄目。神秘もファンタジーも、僕の頭の中の構成物は全部吹っ飛ばされて、コミックの枠に組み直すこと 30sec 、後はもうハリウッドお気楽コメディとして笑って見る事にした。でもあんまり好きじゃないんです、ハリウッドのコメディは。
ただ前半は良い。ベッソンの映画を、常に彼の映像と音楽のシャワーを浴びる積もりで見ている僕としては、まずまず満足だ。ジャンポール・ゴルチェが衣装デザインを担当しており、主人公リールー(ジョヴォヴィッチ)の突飛な衣装などでは、思い切り彼の趣味が出ている。彼はこれに限らず『ロスト・チルドレン』など、結構いろんな映画に手を出している。僕は彼の色は好きなのだが、どうも形は今一つ好きじゃないなあ。
このリールーは、宇宙人の DNA からの再生という形で画面に登場する。その肢体の人間ばなれした美しさに、僕は目を釘付けにされてしまった。長い手足、その身のこなしさえ動物的で、全く素晴らしい。超高層ビルからダイブしたり、後半で立ち回りというか、アクションなどもやってくれるのだが、その姿に、ただぼーっと見入ってしまう。
宇宙船の中の造形や衣装などは、まず良くできていると思うが、それでも『2001年宇宙の旅』の方が全体に優れていると思う。キューブリック映画のデザインには、クラシックな良い造形が見え隠れするところがあり、そこが僕は気に入っているのだ。この作品の中で最も美しいと思ったのは、オペラハウスの中での宇宙人の歌う姿だ。長丁場の銃撃戦や破壊アクションは、ありがちなシーンが多いのだが、それでも息切れしなくて良い。銃など小物のデザインも面白い。
結局、僕個人としては、良くも悪くも無い映画と思えるが、僕はベッソンにはもっと鋭い「キレ」を期待したい。僕にとっての彼の映画は、『サブウェイ』『ニキータ』などがそうだったように、映像と音楽から来るスピード感と、緊張感のあるストーリー展開のマッチング、その切れの良さが全てと言っても良い。
『フィフス・エレメント』に、ベッソン的要素は確かに詰まっている。しかしそれらの連携は、いま一つベッソン的ではない。ベッソン工房製ナイフの切れ味を、次作にこそ期待したい。