Cinema Essay

松岡きっこの誘惑


ここのところ何本か '60 - '70 頃の邦画を見ている。『黒蜥蜴』『ガス人間第一号』『サンダ対ガイラ』などだ。子供の頃に『怪獣大戦争』などの特撮ものも良く見たが、それが懐かしくなるせいか、どうも掛かると見ようかという気になる。

当時の邦画はどうも垢抜けなくて嫌いという人が多いような気がする。確かに演技も思い切りわざとらしかったり、をいをいそれはないやろうと言うような場面があって、失笑を買いかねない。

僕はそんな中、どうも昔の女優さんが美人に見えて仕方が無い。『用心棒』で見た司葉子の美しさが目に焼き付いている。そして『黒蜥蜴』の松岡きっこを見て、その思いは確実なものになった。

いや美人だ。全く美しい。『黒蜥蜴』はレビューとして集中して書きたい事があったため、こんな馬鹿な事を書く余地が無かったのだが、これだけはどうしても書いておきたい。松岡きっこは美人である。
今も彼女は時々テレビに出たりするが、その姿しか見ていない僕は、彼女が若い頃こんなに美人とは知らなかった。彼女が『黒蜥蜴』の画面に登場した時は息を呑んだ。
劇中、彼女は薬を嗅がされてトランクに詰められるのだが、その時どういう訳か服を脱がされて、カメラが彼女の裸体を嘗め回すように撮る。体型はいまどきの女の子の方が遥かにすらりとして綺麗なのだろうが、しかしそれにしても十分に綺麗だ。バストも今のような「寄せて上げる」下着が無い当時にしては立派なようで、半裸のシーンで胸が映らなかったのが残念だ。しかし何より僕が驚いたのは顔の線の美しさだ。

整った顔立ちではあるが、頬から顎にかけてのカーブのその美しさ。見たときに思わず目で追ってしまい、絵に描き止めようとしている自分に気づく。付けまつげだろうが、それに負けない派手な目と顔のつくり。にっこり笑ったときの口の形。ぜひ髪を上げて顔をもっと見せて欲しかった。

当時の彼女の雰囲気で、今一番近いのはフルメイクしてニッコリ笑った横山めぐみだろうか。五十嵐淳子のように、美しいまま今に至って欲しかった。しかしまだこれからもある。鰐淵春子のようになっても困るのだが、加賀まりこも困る。松岡きっこの前途は多難である。

Report: Yutaka Yasuda (1997.11.06)


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