Cinema Review

毎日が夏休み

監督:金子 修介
作者:大島 弓子
出演:佐野 史郎佐伯 日菜子、吹雪 ジュン、高橋 ひとみ、小野寺 昭、黒田 福美

出来すぎた新興住宅地にすむ高校生、杉苗の父親は、これまた出来すぎたエリートサラリーマンで、家庭はまさに出来すぎた核家族。しかし杉苗は毎朝学校へは行かず、父親も会社には行かない。彼女は登校拒否。父親は辞職したのだ。

この作品は公開当時非常に評判が良かった。この作品でデビューとなった佐伯日菜子の評判も非常に良かった。そのため僕はこの作品を見なかった。良くない癖だがしようがない。

今回は深夜のテレビ放映を録画して見たのだが、なるほど楽しい作品だ。当時評判が良かったのも分かる。伸び伸び、明るく、楽しくまとまっている。学芸会のようなシーンもあるが、そこはまあ良い事にしようよ。だって楽しいじゃないですか。
ところがナイター野球のせいで録画に失敗。ラスト数分が切れたため、急いでレンタルビデオで借りて見直す羽目になった。

ところで、この作品の一つ前に見た映画は江戸川乱歩の『人間椅子』なのだ。主演が清水美砂と言うこともあって期待して劇場に行ったのだが、これが駄目。何とも僕には詰まらなかった。乱歩モノはどれも皆いまひとつの様に思う。原作を超えられないと言うことか?

そして次に見たのがこの『毎日が夏休み』と言う訳だ。こりゃあ良い。明快で合理だが何かおかしい論理に支えられている不屈の父親と、その社会性の欠落を補って余りある程に常識的な娘が過ごすメチャクチャにポジティブな毎日だ。このポジティブさとスピード感が実に楽しい。

「人生は意外と何度でもやり直しのきくゲームなんだ」と言う佐野史郎のセリフや、学芸会的な演技の背景がヤケにきれいな絵だったり、血のつながらない父と娘の距離感がト書き的なセリフ回しにうまくマッチしていたりと、狙っているのか外しているのか判らないようなところがある。結構金子監督はいろいろ考えていたのかも、と思ったりもする。

原作は少女マンガなのだそうだが、僕は読んだことがない。そう言えば佐伯日菜子が着ている服は面白いデザインのものが多く、マンガチックにさえ見えるのだが、彼女は手足が長くて、それが良く似合う。彼女も含めて、このキャスティングにこの空気を合わせただけで、成功は約束されたようなものだと思える。
そんな非現実的な少女マンガ的物語だが、何しろ『人間椅子』にヤラれた後の僕には眩しくて、涼しくて、楽しかった。そうだよ、たまにはこういう映画も見なくちゃいけないよ。そう思うでしょう?

ところがこの作品と共に借りたビデオは浅野忠信主演の『Helpless』だったりして。ああそして駄目だった。またヤラれてしまった。ええい仕方ない、近いうちに『ファンシイダンス』が深夜放映される筈だ。今度はそれでも録画しようかな。。。

Report: Yutaka Yasuda (1997.08.29)


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