Cinema Review

20世紀ノスタルジア

監督:原 将人
出演:広末 涼子、圓山 努、余 貴美子、根岸 吉太郎

遠山杏は片岡徹に突然声を掛けられた。徹は宇宙人チュンセに操られて、地球人の生態を探るべく取材をしているという。杏はチュンセから生まれたポウセを受け入れ、二人の高校生は一緒に東京の町をビデオに撮りはじめる。

実にワケワカラナイ映画だった。僕は原監督のことをまったく知らず、単にチラシの写真が良かったので見ることに決めたのだが、いや全く振り切られてしまった。余りの振り切り度に珍しくパンフレットと、更に珍しくインタビューの載ったキネマ旬報などを買ってしまった。勿論そんな事をしてもワカラナイものはワカラナイままなのだが。

とりあえず映像的には好きな部分が幾つかあった。
全編の半分以上にも及ぼうかと言うハンディビデオからのキネコ映像は画質も悪く、本来僕が嫌いなものだ。対して残りのフィルム部分は対照的にこれでもかと解像度を要求する絵を詰め込んでいる。遠景に東京の高層建築などを入れた上でパンフォーカスとし、マンションの窓までガッチリ写し込んでいる。むしろ細部を写し込むことで都市のイガイガを表現したかったのだろうか。
そしてビデオ映像(多くの場合出演者自身が撮影している)、むしろこちらの方が主演の広末涼子は生き生きとしていて、僕は引き込まれた。原監督は広末涼子の輝きをビデオに封じ込めたのだ。劇場でその缶詰は封を切られ、今度は逆に僕が "20世紀ノスタルジア缶" に吸い込まれる。
僕はこの作品から特に重要なメッセージを感じることもなく、ただ最後までじーっと見ていた。僕の嫌いな、粗いビデオの画像に、ずっと注目していた。

何とも不思議な映画だ。多くの人から良い評価を受けるとも思えない。タレントとしての「ヒロスエ」ファンにさえ受け入れられないかもしれない。もう二度と上映されないかもしれない。しかしこの映画は、少なくとも僕の記憶に残る映画の一つになりそうな気がする。

見終わった今、僕は思い返す事が出来る。先に述べた解像度の高い絵と、徹の焦燥、「都市は現代人の森」「地球は滅亡する」と言うメッセージ。ビデオの中の生き生きした二人と、杏の「地球は滅亡しないよ」と言うメッセージ。それらを冷静に整理すれば原監督のイマジネーションが、あと一歩で読み解けそうな気がする。あと一歩だ。

でも、僕はこの映画の読解などしない。すればするほど、僕の記憶が無くなってしまいそうだからだ。

Report: Yutaka Yasuda (1997.08.15)


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