何というか、征露丸の中に糖衣が(変な表現)入っているような映画。
いわゆる"ツカミ"は全然いけてなくて、「げーっ、全編この調子やったらおわってるでー」って期待してた分軽いショックを受けながら観てたら、あとからじわじわ効いてくるんですよ、これが。
父親のイエスマンだった主人公が、その呪縛から逃れられずに、あるいは逃れるための唯一の自己表現の手段としてのピアノによって自己崩壊してしまうのは確かに(英才教育にありがちな)悲惨ではあるけど、やっぱり天災と狂気は紙一重というか、凡人には何かに自分の命を賭してまで、とは思えないわけだから、それも一種の幸せというべきなんだろう。苦しいだろうけど。
本当にいろんな問題をかかえこんでる映画で、まじめにみちゃう人にしたら、重いかもしれない。
でも、そんな空気をやわらげてくれるのが、オーストラリアの自然。
ぬけるような、すいこまれるような胸が焦がれるような空の青さが、すごく重要なポイント。それと、主人公のおしり。
すっぱだかで海で遊べたら、ほんまに気持ちいいだろうなあ。まわりの空気と一体になって、体の中の細胞の1つひとつが元気になって、シナプスが発光して、チェシャ・キャットとランゲルハンス島でこんにちわ、みたいな。
(あくまで私個人のイメージであって、事実とは異なります)
音楽もすごくいいよー。ピアノを弾いてる人の手が(誰の手か分かんないけど)、すごくきれい。いわゆる"たまごをつかんだカタチ"がちっともくずれないで、それでいて軽快だったり荒々しかったり。
その手の動きをみながら、ラフマニノフなんかきいたら、クラシックにあまり興味のない人が観ても結構たのしめるんじゃあないでしょーか。
主人公と一緒に遊んでる気分になれたら、サイコーな気分になれるよ!!