男がその家を長期滞在先に選んだ決め手は、そこの娘が美しかったからだ。そこで暮らすにつれ、男はますますその少女に引かれていく。
ウラジミール・ナボコフの同名小説を元にした 1962 年のキューブリック映画。勿論モノクローム。この翌年にP.セラーズを主役(しかも一人三役)に据えた『博士の異常な愛情』が作られている。僕は『博士の...』を数年前にテレビ放送で見ており、かなり面白かったので、未見のこの作品にかなり期待していた。が、、、、少し期待外れだった。と言うのは、映像的、構成的な部分で非常に標準的と言うか、普通のつくりをしていたからだ。残念ながら僕はもう少し斬新なものを期待していたのだ。
内容で面白かったところと言えばやはりピーター・セラーズの怪演と言うか、良く分からない謎な演技だろうか。相変わらず早口で、ワケの分からないことを喋りまくる。それから美少女役の女優さんがなかなか本当に美人だ。ここを失敗すると映画そのものが成り立たなくなる所だが、さすがにしっかり押さえているなあ。うん。
しかしやっぱりココロに響かなかった。変質狂的な執拗さ、正常さと異常さの同居、その辺りの描写に今一つ追い詰められるものが無かった。どうも絵空事的距離感を感じてしまう。逆にキューブリックが後年作った『シャイニング』『フルメタルジャケット』はその辺りを非常に執拗に描いていて素晴らしかった。どちらも僕らの心の中に同居する狂気を示している。ん?要するに僕の趣味がそう言うものという事なのかな?
キューブリックは好きな監督の一人で、『時計仕掛けのオレンジ』『2001年宇宙の旅』『シャイニング』『フルメタルジャケット』などが気に入っている。
10年の沈黙を破って新作を製作中とのことで、期待してる。でもキューブリックのことだから、10年経ってまだ公開されなかったとしても諦めちゃいけない。