路線バスの若い女車掌達の間で妙な噂が流れていた。若い運転手が次々と女車掌を殺して行くのだと言う。その時トミ子は死んだ友達から手紙を受け取る。そこには私は殺されるかも知れないと書かれていた。
何が気になってこの映画を見たのかと言われれば、もうそれはたくさん有るのだ。
原作は夢野久作。僕は彼の小説のうちほんの僅かを読んだだけなのだが、結構面白いと思ってしまった。ただ『ドグラ・マグラ』だけは二度トライしたが遂に読み切れなかった。どういう訳か途中で体調が悪くなって一旦停止せざるを得なくなる。この『ユメノ銀河』は、彼の作品のうちの『殺人リレー』がモチーフになっているのだそうだ。
監督は石井聰瓦。前に劇場で見た『水の中の八月』の、何より美しい映像が僕はすごく気に入ってしまった。石井監督と言うと『逆噴射家族』や『爆裂都市』などと言う作品の方が有名なのだそうだが、僕はその頃の作品を全く知らない。ただこの『水の中の八月』一本で石井監督は僕の要チェック監督になってしまったのだ。
主演は小嶺麗奈。彼女はその『水の中の八月』で映画デビューしたのだが、そこで放った光で、僕の要チェック女優さんの一人に決定した。
そして浅野忠信。『FRIED DRAGON FISH』以来、彼は僕の最重要チェック俳優なのだ。
こうなればもう見るしかないでしょう。
というわけで見たのだけれど、正直僕には余り面白くなかった。前作の『水の中の八月』で余りにも鮮烈な映像が焼き付いた僕の視覚には、モノクロームのスクリーンがぼけて見えたのかも知れない。。。いやいや、それは違う。間違いなくあれはスクリーンがたるんでいて、そのせいでまん中辺りがピンぼけになっていたのだ。
残念なことに上映した小劇場はスクリーンの調整が甘く、普段は気にならないかも知れないピントの甘さが、モノクロームで動きのゆっくりしたシャープな画面を台無しにしていた。そのせいでフラストレーションがかなりたまったのは事実だ。
ただ、それを引いてもやはり余り面白くなかった。何故なんだろう。
もっと危うげな、もっと平衡のきわどい揺れを僕は見たかったんだと思う。余りにもこの作品は落ち着きすぎているのかも知れない。
ところでこの作品には何人もアイドルタレント的な若い女の子が出演している。僕が気になったのは最初に死んでしまう黒谷友香で、すらりとした長い手足の割に、古風というかミステリアスな雰囲気があってなかなか良かった。今後も映画に出て欲しいと思った。小嶺麗奈は逆に今一つだった。次作に期待したい。
と、これで終わっては詰まらないので、ここで話はいつもの様に脱線するのだ。
夢野久作と言うと僕は数年前に京都でレイトショーを見たことが有る。夢野久作特集と言う名前が掛かっていたと思うが、『少女地獄』と『瓶詰地獄』を掛けたのだ。
僕は夢野久作を扱った映画と言うと『ドグラ・マグラ』(未見)しか知らなかったから、これは見なくては!と勇んで行った。が、その二本は何とにっかつの成人映画だった。成人映画では露出が有りさえすれば、それ以外の制約が少ないと言うことで実験的な作品があると言う話を聞いたことが有ったから、それでも多少の期待を持った。しかし何と言うか、うーん、見事な成人映画だった。『少女地獄』の方はまだ非常に奇妙な映画で、他に例を見ないと言うことで確かに見る価値はあったかも知れないが、『瓶詰地獄』の方は本当に何と言うことのないものだった。途中で客も帰る帰る。高校生などがたくさん来ていたようだがどんどん帰った。(最近見た『クラッシュ』でも何人も帰った。何故なんだ?)
しかし『少女地獄』は僕が最も好きな夢野久作作品でもあり、この『ユメノ銀河』で取り上げた『殺人リレー』は、『少女地獄』の中の一編なのである。
後は何とか『ドグラ・マグラ』を見たいものだ。どこかで再上映しないだろうか。。。(今行ってきた映画館で見たチラシに、『少女地獄』をまた掛けるとある。監督の小沼勝が有名人なのだろうか?そんなことなら『ドグラ・マグラ』を!)