実質ラスト30分が主なメインテーマで、ラストシーンを撮りたいが為にこの映画を作ったのだろうという監督の意図が感じられ一見、前半部の個人個人のショートストーリーが無意味に感じられたのだが、ラストになってようやくこれらが一つ一つ意味のある伏線だという事に気付いた。引っぱって引っぱって最後に納得、バラバラな点がラストには一本の線になるというつくりだ。ラストシークエンスの「クリスマスストーリー」で前半部の内容(実はオープニングシーンはエンディングシーンのフラッシュバック)と「目に見えない絆が意味するもの」が明白になるのだがそのカラクリは見事!「クリスマスストーリー」自体にも泣かされてしまうが、そこに付随する登場人物のエピソードも後になって意味深いものだったと考えさせられる。各々、孤独に生きているのだが人と接することで明るく生きようとするそんな温かさがにじみ出ていて、しみじみしてしまう。お互い「ツーカーの関係」というか「あ・うんの呼吸」というか、セリフ回しも妙に凝っていて面白い!
ブルックリンの下町の風景、そしてサブウェイ・・・カメラワークが一定で人物がその中で演技しているシーン、ハーベイカイテル扮するたばこ屋のおじさんが、毎日毎日、同じ時刻に同じ場所の風景を写し、その写真をポール(ウイリアムハート)に見せているシーンなどは感動的。
「フリをする」「フリをしていることを知りつつ受け入れる」これがこの映画の鍵かもしれない。全てのシチュエーションに言えることだが、このキーワードは人間の心の広さ、温かさを感じさせてくれる。機会があったら是非観てほしい映画の一つである。