各国のタクシードライバーに関するオムニバスエピソード集
物事を考えていたり、書きものをしたり、本を読んだりして一夜が明けることがまれにある。皆が寝静まりかえった真夜中から日が昇る明け方まで起きていると誰も干渉されず、何をやっても許されるような怖いぐらいの自由を感じる事があったりして・・・真夜中とは何とも不思議な時空間だと思う。
この映画はそんな真夜中に焦点を当てた各国のタクシードライバーに関するオムニバスエピソード集だ。「ナイトオンザプラネット」(NIGHT ON THE EARTH)というタイトルだけあってロサンゼルス・ニューヨーク・パリ・ローマ・ヘルシンキと世界中の夜を描いている。登場人物はタクシードライバーと客だけ、映し出される映像は各々の国の夜景とタクシーの車内だけ、といたってシンプルな作りだけにタクシードライバーと客のしゃべくりだけがこの映画の勝負どころだ。(特にニューヨーク編は最高!)
このしゃべくりだけでタクシードライバーと乗客のパーソナリティーを全て伺えてしまうところは凄いといえば凄いし、しゃべくりだけが勝負どころとあってストーリー自体もなかなか面白い。今となっては大女優のウィノナライダーやベアトリスダルがそつなく演技をこなしていて、これがまた、上手い。(大御所ジーナローランズも、もちろん上手い。)
そんなこんなで、Pm10:00〜Am6;00観終った頃には朝焼けが・・・こんなに時空間を感じさせる映画もめずらしい。夜景しか出てこない図柄もめずらしい。『銀河鉄道の夜』を彷彿させるようなそんな世界一周夜行の旅に出た気分にさせられ、タクシードライバー達と夜を共有し合った、そんな不思議な感覚におそわれた。何とも奇妙な体験である。