新鋭監督ロバート・ロドリゲスのデビュー作『エルマリアッチ』の続編。
これは恋人を殺られ自分の命とも言うべき右手を殺られ復習に命をかけたマリアッチ(ギターを弾き語りする人)の話である。
バンデラスのバンデラスによるバンデラスの為の映画と言わんばかりの独断上の一人芝居だが「愛する女を守れなかった世界一危険なマリアッチ」という非常にうまいキャッチコピーに乗せられすっかりはまり込んでしまった。こういう一人うっとり演技は度が過ぎると辟易してしまうものだが、何故かアントニオバンデラスだと嫌味にならない。しかし、それだけで終ってしまっては単に彼のナルシステックワールドを延々と見せられたに過ぎないところ、この監督の力量が現われた。後半にかけて一気にシリアス路線からコミカル路線に転身させた所にこの映画の勝因があった。決してシリアスを忘れないコミカルさ、この微妙な匙加減が見事に成功していた。故意的に笑いをとろうとしたのではなく、実に自然にコミカルさをあらわした所にも好感がもてた。心地よい笑いとはこういうものだろう。
登場人物のキャラクターも実に魅力的でヒーローとはあるまじき自己中心的でおとぼけな主人公。これ又、自分の事しか考えていないしたたかでタフなヒロイン。そして動きはすでにコミック化している召集された古き良き二人の友、ブッチョ(敵)一味にいたっては何だかお祭り騒ぎのご様子・・・と誰をとっても愛すべき人達なのだ。(まぁ、クオンティンタランティーノの友情出演だけはちょっと余計ではあったが。)実にふざけた都合のよいストーリー展開であってもコミックなのだから全て許される。ラストのオチなんて、涙がでそうなほど笑った。兄弟喧嘩のシーンも低次元過ぎて馬鹿馬鹿しくて大好き。エンターテーメントはこうでなくっちゃ!心から笑えるそして酔えるラテンものだ。