Cinema Review

ダメージ

Also Known as:Damage

監督:ルイ・マル
出演:ジェレミー・アイアンズジュリエット・ビノシュルパート・グレイブス

つい先日(といってももう随分昔の話になってしまったが)亡くなったルイ・マル監督の作品。

父が息子の恋人を寝取ってしまうというこの手の話はどこかで見覚えのあるよくありがちなプロットなので別にそれ自体に衝撃を覚えることはない。無論、この映画はイロ物的なスキャンダル性の高い作品とは一線を画している。私としてはイロ物的な事よりむしろ内面描写に注目したい。息子の恋人アンナをファムファタル化してしまったときのスティーブンの心の葛藤、家庭第一の父しかも厳格な父だからこそ苦しめられる良心の痛み、本当のファムファタルに出会ってしまった事の幸せと喜び、そしてそれに見合うだけの不幸。(最もラストは悔やむというよりこれを運命(さだめ)として受け止めているといった感があるのでスティーブンがアンナに出会った事は後悔とはうつっていないのかもしれないが・・・)

哀愁に満ちた背中と上目づかいのあの瞳だけですべての心情がこちらまで伝わってくるところは流石だと思う。役者だと思う。巨匠ルイマルの力量か?それともジェレミーアイアンズのノーブルさが効を奏したのかドロドロの愛憎劇になるはずがさらりと上品にまとまっていて上流の雰囲気を最後まで壊さずにいれた所にも好感がもてた。エンドクレジットのタイトルバックもBGMもシックで私のセンスにピッタリだった。

ただ一つ気になったのはアンナに関してだ。Who are you ? (一体何者?)確信犯的な要素を持つ何かをたくらんでいる(例えば政治的な面でとか・・・)女だとずっと怪しんでいたのだがどうも違ったようだ。不幸を導く女ではあるけれども確信犯ではなさそうだし、つかみどころのない女性である。魔性の女とはこういうものか?(問題が起きるとすっとその場から立ち去る所が悪女的でもあるが・・・)

Report: Yuko Oshima (1997.01.11)


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