ベートーベンの永遠の恋人とは?
Sir Georg Solti 指揮、ロンドン交響楽団による演奏の素晴しさも然る事ながら、やはり今回もベートーベン 扮するゲイリーオールドマンの一歩間違えれば狂気ともとられかねない(因にショートテンパーな役をさせれば彼の右に出る者はいない!)繊細さの伴った迫真の演技が効を奏したと言えよう。圧巻。
ベートーベンの息遣い一つ一つが deaf であるが故の彼の苦悩と激情がこちらにいるオーディエンスに直に伝わってくる。(強く心を揺さぶられ、身震いし、鳥肌が立った。「心を奪われる」とはこういう事だったのか、余りの演技の巧さに拍手!)と同時に奥に秘められた甥カールや不滅の恋人に対する愛情がひしひしと伝わってくる。
この非常にナーバスで ショートテンパーな、しかし不器用であるが故に人々に受け入れられて貰えず偏屈者として扱われた同情の 余地のある天才の結末をバーナードローズはドラマチックでかつロマンティックに描き上げた。だが、少々やり過ぎの観も有る。ストーリーの運びもまずい気がしないでもない。ただしキャスティングが良かったのでこれらは随分カバー出来た事だろう。ラストはベートーベンへの愛しさのみが余韻を残すという甘ったるい出来にはなったものの ゲイリー 自身が持つセクシーさを持ってすれば納得である。
最後に最大のテーゼである「Who is immortal beloved?」だがこの結論はあくまでバーナードローズの見解なので事実とは異なる事に注意したい。伝記というよりはむしろベートーベンの人生をデフォルメして作られた寓話と言った方が適切だろう。