Cinema Review

眺めのいい部屋

Also Known as:A Room with a View

監督:ジェイムズ・アイヴォリィ
出演:ヘレナ・ボナム・カーターダニエル・ディ・ルイスジュリアン・サンズ

20世紀初頭イギリス。イタリア観光中に知り合った自由主義哲学者エマソン氏の息子ジョージとまったく対照的な良家の御曹司セシルの間で揺れるハニーチャーチ家の令嬢ルーシーの女心はいかに?

古典調のタイトルバック、クラシカルな音楽、そして衣装といかにもジェイムスアイボリーらしい演出でわくわくする。これぞイギリス映画の醍醐味だという気がして見ているだけであきない。
ストーリーに関しては割に単純で封建的でお家第一という階級制度にとらわれていた(当時時代の風潮か、それともお国柄か?)一族の元で育ったごく普通のコンサバティブな少女がイタリアで経験した恋にひきずられながらも何の疑いもなく親の言う通りに自分に見合った男性と恋愛し(本能的ではなく観念的にこの人を愛そうと心に決めていたふしが見られる)婚約までするのだが、そこで偶然にもイタリアで知り合った青年と再会してしまう。彼は家柄こそ良くないものの、父の自由主義思想が子供の時から染みついている為、自分に素直で正直だった。彼の情熱的なアプローチに引き寄せられたルーシーは婚約者を捨てて結局ジョージに走ってしまうというお話だ。

よくある話だと思われがちだが当時の時代背景を考えるとルーシーはかなり思いきった行動に出ている。階級制度の重み、周りのとりまき(おばさま方)を押し切っての行動は相当な勇気が必要だろう。「自分に素直に忠実に生きたルーシーの生き方」にはトラッドにしばられ続けた彼等に新しい風が吹き込まれた、そんな清々しさ爽快感を覚える。そして「階級制度」の重みというものはイギリスだけではなく現代におけるこの日本にもまだ残っている気がする。「箱入り娘→お見合い結婚」この図式が消えない限りそれはずっと在り続ける事だろう。(もっとも医者か会社の社長令嬢ランクの人々の中だけの話にはなってしまっているが・・・)

完全版ならではの水浴びシーンが良かった。楽しい!(映倫にひっかからなかったのか、それだけが疑問だったが・・・現に86年度公開版ではシーンごとごっそりカットだったし・・・)わざわざ映画館までいって完全版を見ようとする私もどうかしているが、『モーリス』『アナザカントリー』『マイビューティフルランドレッド』とこの手の映画を映画館までわざわざ、足を運んだおかげで(!?)見ている客層がわかった。30代の女性と5・60代の紳士風の男性が圧倒的に多いのだ。ステッキを持った洒落たハイカラなおじいさんが多いのにはびっくりしたが、過去を回想しているのだろうか?(なぜかイギリスの庭園にでもたたずんでいたら絵になりそうなおじいさんばかりだ)30代の女性が多いのは80年代の『モーリス・アナカン』ブームの影響でしょうね。

Report: Yuko Oshima (1997.01.11)


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