Cinema Review

フェリスはある朝突然に

Also Known as:Ferris Bueller's Day Off

監督:ジョン・ヒューズ
出演:マシュー・ブロデリック、ミア・サーラ、アラン・ラック、ジェニファー・グレイチャーリー・シーン

フェリスはある朝突然に仮病を使って学校を休む。こんな天気の良い日に学校に行くのはもったいない。毎度だまされながら今度こそ尻尾をつかもうとする校長の追及をかわしながらあっちこっち飛び回るフェリスとその友達二人のエスカレート振りが楽しいコメディ。

僕はコメディは殆ど見ない。好きじゃないのだ。青春映画も見ない。やっぱり好きじゃないのだ。結局それらを楽しめないという事なんだなと思う。この作品が公開された頃、結構青春映画が流行っていたと思うのだけれど、僕は殆どどれも見てない。そしてつい先日ビデオでこの青春コメディ映画を見たのだ。ところが、ところが。これ結構面白いじゃないか!

この作品、原題は『Ferris Bueller's Day Off』で、文字通りフェリスの休日を一日分描いたものだ。「人生は短い。楽しまなきゃ嘘だ。」そう言いながら彼は好き放題の休日を過ごす。うまく行かなさそうな事が起きるとアタマをフル回転させて切り抜ける。
この作品の良い所はやはりストーリーと構成なんだろうと思う。スピードというかテンションの具合が気持ちの良いところで揃っている。途中で力抜けしたりしないし、逆に無理をしている感じもない。何と言うか自然にうまく流れていると思う。要するに作りがうまいと言うことなんだろうか。
無駄のないストーリー、冗長な部分を切り詰めたカッティング、効果音も音楽も良い。一日分のストーリーにたくさんの遊びとハプニング、そしてフェリス兄妹の関係や金持ちの家で少し問題を抱えて育ってしまった友人と、その親との関係まで、様々な要素を投げ込んで、無理なく解決するという離れ技をやっているのだからやっぱりうまいとしかいいようがない。
聞くと監督のジョン・ヒューズは脚本も書く人で、この作品もそうしている。つまり一人で作ってしまったからこれだけタイトに決める事が出来たのかなとも思う。

主演のマシュー・ブロデリックは『ウォー・ゲーム』でデビューしたと思ったけれど、僕は彼をそれ以外では知らなかった。そのせいかこの作品の中でもサンプリングマシンやIBM PC/AT(互換機じゃなくてそのもの)の他、当時のハイテク商品が散見される。そういう意味では途中で出てくるフェラーリGTOもカッコ良く、小物にはなかなか凝っている。そうか、要するに映画凝りが作った映画なのかな?ストーリーの本筋以外の所の台詞や効果音に中々凝った所が見られる。この作品の一つのカラーになっていると思う。
恋人役のミア・サーラは『レジェンド』でお姫様役をやっている。友人役のアラン・ラックは知人に聞くと『スピード』に気弱なバスの乗客として出ていたそうだ。ふーん、という感じ。
最後の方に思い切り若いチャーリー・シーンが出てくる。見かけはジャンキーのアウトロー風だが喋ることは常識的でえらいまともと言うわけの判らない役だ。おもろい。

「人生は短い。楽しまなきゃ嘘だ。」フェリスはそう言う。僕もそう思う。楽しまなきゃと言うと儒教精神でしつけられた僕らはどうも後ろめたいもんだけど、それでもやっぱり僕の時間は僕のもんだ。それがウソの時間になっちゃ駄目だ。楽しめるかどうかは別として、僕にとって僕の時間は本物の時間にならなきゃウソなのだ。
積み上げよう。本物の時間を。

Report: Yutaka Yasuda (1996.12.23)


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