ある日出会った男と女が犯罪を繰り返しながら続ける逃避行。彼等に安息の日々が訪れるのはいつか。
僕はこういう古典名作映画的なものを殆ど見ない。今回は衛星放送で掛かったから見たようなものだ。原題は『Bonnie and Clyde』。原題と全然違う邦題は不思議ではないが、当時のはまた掛け離れたタイトルが多いように思う。『哀愁』実は『Warterloo Bridge』のごとし。それで名作として記憶されると結構しっくり来るから不思議。
閑話休題。
実話を下敷きにした作品なのだが、実に悲しいストーリー。たった一人の正直者も居ない。善人も居ない。嘘と裏切りと暴力があるだけだ。否、ただ一人ボニーの母親だけが正しいことを言う。「あなたたちは一生逃げ回るしか無いんだ」と。
男はハンサムで悪ぶっているが度胸は無く田舎者で、銀行強盗も今一つ決まらない。男は女が苦手だと言うが何のことはない不能で、それもまた決まらない。
男と女はひたすら犯罪を重ねて走り続ける。車を替え、物を奪い、些細な抵抗者を殺す。そして逃げる。まるでそうすることでしか生きられないようだ。
女は翌朝全てがチャラになって新しい未来がやってきたらどうすると聞く。男は全てが変わると言う。そう、仕事をする州と住む州を変えて、犯罪は他所でするのだ、、、。何も変わらない未来しか考えない男を、それでも女は愛し始める。しかしそれは悲しい。終らない暗い未来。その闇にどっぷり両足を突っ込んでいる男とそんな男をそれと知って愛する女。悲しい。
この作品には音楽は殆ど使われない。乾いた絵。静寂と会話と嵐のような銃声。それだけで切迫した雰囲気を伝える。伝わってくる。
これでもかと降り注ぐ銃弾の雨で、突然にボニーとクライドの話は終りを告げる。救いが無いが、その為か美しいシーンだと思う。