この映画を作った会社は「UFO」と言う。
映画の大好きな人達の集まりで、皆年が若い。社長であるピーター・チャン監督は何とまだ32歳であり、彼の監督デビューは27歳であった。若い。しかし、そりゃもうものすごく心に残る作品を最初から撮っていた。そして、『月夜の願い』は彼が29歳の時の作品である。今から3年前のことだ。実はこの作品、公開前から香港ムービーファンの間での評価は高く、ようやっと見れたわたしは、感激ひとしおだったりする。ストーリーは、香港版バックトゥザフィーチャーと言うところだが、香港ムービーにありがちな、単なるパロディではない。むしろ、本家本元よりもずっと心あたたかい、心に染み入るファンタジーである。そして、また爆笑コメディでもある。
俳優陣も豪華で、個性のありすぎる顔ぶれが、お互いをつぶすことなくぶつかりあっている。これはもう見事というしかない。特筆すべきはやはりトニー・レオン。王家衛(ウォン・カーアイ)作品の常連であるから御存知の方は多いであろうこの人、私はこの作品を見て始めて心から良い役者だ、と思った。泣かせるわ笑わせるわで、でもやっぱり泣かせる演技だった。最高の演技を見たと断言できる。
レオン・カーファイも、気の良すぎる父親役をそれはもう素晴らしくホットに演じていた。豪華な役者の最高の演技と監督の熱意に支えられたこの作品は、間違い無くとても贅沢な映画である。見ているこっちの心までリッチにしてくれる作品である。だから少しでも多くの人に見て戴きたい。そして思いきり笑って泣いて貰いたい。日本で「UFO」作品が見られる、こんな贅沢なことはそうそうないのだから。